2021 Fiscal Year Annual Research Report
Phylogenetic and demographic analyses of grassland butterflies to reveal spatial structure of conservation units and the significance of grasslands for conservation
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21H02221
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
大脇 淳 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (40539516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
中濱 直之 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (50807592)
木下 豪太 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 博士研究員 (60774578)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 草原性昆虫 / 系統地理 / 保全単位 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度であるため、遺伝解析の結果はまだ出ていないが、進捗状況は当初の計画通りである。「現在までの進捗状況」に書いた通り、本年度は主に対象種である草原性チョウ類のサンプリングに注力した。サンプリングは順調に進んでおり、今後、対象種の遺伝解析を進めていくことのできる状況は整いつつある。 草原性チョウ類各種の集団間の系統地理的な関係や保全単位の解明を目指す本研究において、対象種を分布域全体からサンプル収集することは重要であるが、アサマシジミについては、一年目の2021年度で分布域の大部分をカバーするようサンプリングを実施できたことは大きな成果である。また、ミヤマシジミも順調にサンプルが集まっており、個体数の多い生息地では30個体程度サンプリングすることができた。これにより、そのような集団の集団動態や集団間の遺伝分化の程度など、詳細な遺伝解析を実施できる状況にある。したがって、遺伝解析はまだ実施していないが、それに向けて順調にサンプリングを収集できていることには大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はおもに対象となる草原性チョウ類のサンプリングを実施した。研究代表者、分担者、協力者自身が各地でサンプル採集を行ったのに加えて、各研究者の知人などを通じてサンプルを入手した。その結果、アサマシジミについては、既にサンプリング済みの地点と合わせると、分布域のかなりの範囲をカバーするようサンプルを集めることができた。また、ミヤマシジミについても、サンプルを収集できていない地域も存在するが、ある程度広域的にサンプルを収集することができた。一方、分布域の広いミヤマシジミ、ギンイチモンジセセリ、ジャノメチョウは全国からサンプルを集めているが、サンプリングできていない場所も多い。また、当初予定していたゴマシジミは、他のグループが既に本種の系統地理を研究していることや現存集団のサンプル収集の難しさなどの理由により研究対象から外し、サンプリングがより容易な草原性チョウ類であるコキマダラセセリやツバメシジミなどに調査対象を変更した。 草原性チョウ類の集団間の系統地理的な関係や保全単位の解明を目指す本研究において、分布域全体をカバーするようサンプリングすることは非常に重要であるが、アサマシジミやミヤマシジミのように、日本国内の分布域をしっかりカバーするようにサンプル収集できていることは大きな意義がある。また、初年度からサンプル入手において複数のチョウ愛好家と新たに協力関係を築くことができた。 また、研究代表者の所属機関においてもDNA抽出やPCRを実施できるよう実験室の設備を整え、研究代表者、分担者の全員がPCRまで実施できるように整備した。 以上のように、サンプリングの進捗状況、サンプルを入手する上での各地の愛好家との協力体制の構築、実験室の整備状況、研究の早い段階での対象種の柔軟な見直しなどを総合的に考えると、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のサンプリングを終えて、研究代表者、分担者が入手したサンプルは各研究者の手元にあるが、まずは研究者間で分担する種を決め、担当となった種を各研究者の手元に集め、各自が対象種のDNA抽出、PCRを進められる状況を整える。 アサマシジミはほぼ分布域全域から広くサンプルできているが、チョウの愛好家にも人気のあるチョウであるため、絶滅産地も含め、様々な産地の標本が愛好家の手元に存在すると考えられる。そこで、本種については標本DNAの入手も行い、予備的な遺伝解析を実施することを目指す。本州中部にのみ分布するミヤマシジミについても、サンプルできていない地域の集団の収集を進めていく。一方、分布域の広いヒメシジミ、ギンイチモンジセセリ、ジャノメチョウについては、まだサンプリングできていない地点が多いため、チョウ愛好家とも連携して、それらの地域でのサンプリングを行う。また、これまでほとんどサンプリングを実施してこなかったツバメシジミやコキマダラセセリなどについては、次年度以降から日本各地でのサンプリングを実施する。 以上の方針により、既にサンプルが集まっているアサマシジミについては、標本DNAも含めた遺伝解析に着手する一方で、サンプリングが不十分な種については分布域全域をカバーするようサンプル収集を強化する。
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