2021 Fiscal Year Annual Research Report
Consideration for the construction of green infrastructure with connectivity aiming at the improvement of urban forest function
Project/Area Number |
21H02224
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 昌三 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (50211959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 亘 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60399128)
小宅 由似 香川大学, 創造工学部, 助教 (30846176)
貫名 涼 (東口) 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30832688)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 都市林 / 生物多様性 / 環境緩和機能 / 連結性 / グリーンインフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
京都市とその周辺には数多くの都市林要素が多様な機能を持っている一方で、各要素の分布には偏りがあることから、各要素の繋がりの創出あるいは再生を目的とした研究を行った。研究は、①都市林の構成植物が持つ機能、②都市林に依存する動物相、③都市林の連結性を高めるための空間解析、④失われたもしくは隠された連結性を高める空間の再生方法の検討、⑤伝統的知識の再評価によるグリーンインフラ機能の向上方法の検討、⑥都市計画レベルでの連結性を持つグリーンインフラ構築手法の検討、⑦都市林が持つ機能向上に必要な方策の提案、といったテーマで進めた。 そのうち、令和3年度の主な研究実績は、①~⑥に関する調査研究に関するものである。①では、樹木の降雨遮断機能の測定を開始し、街路樹の地下部の土壌条件等も加味した環境緩和機能の評価を行った。街路樹に関しては、京都市内の街路樹の地下部環境は劣悪ではなく、生育状況として大きな問題はないことが明らかになった。②では、都市域に定着し、適応している鳥類、特にムクドリとチョウゲンボウに注目した調査を行い、都市環境への適応の実態を営巣地やねぐらの調査から検討した。また、隣接する里山における獣害による植生劣化、都市域での野生鳥獣との関係性に関する調査も開始した。③では、都市林要素の分布について、衛星画像を用いた解析を進めた。④では、過去に有効な連結性を維持していたと考えられる水系に関するデータの収集を行った。⑤では、枯山水庭園と都市公園(街区公園)について温熱環境の計測を行った。⑥では、都市林要素の連結性向上のための要素の抽出とインベントリーの作成を目指したデータ収集を行った。 以上のほか、主に韓国・ソウル国立大学とオンラインでの研究会を行い、交流と情報交換を通じて議論を行ったほか、オンラインで開催された国際会議等で成果の公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響によって、街路樹や公園等の緑地空間における緑の空間構造を把握する計画が計測機器の購入を予算の翌年度への繰越予算によって行うこととなったため、主に①都市林の構成植物が持つ機能、及び⑤伝統的知識の再評価によるグリーンインフラ機能の向上方法の検討、に関係する調査の一部で研究の進行に遅れが生じた。しかし、それ以外の項目については計画通り調査研究を行うことができた。 その結果、京都市中心部にある京町屋に高密度に存在する小面積の庭園の空間的特徴の把握、池泉式日本庭園における温熱環境の解析、京都市内の街路樹や街区公園における鳥類の繁殖期の動態やねぐら形成に関する環境要因の研究、鳥類の種組成と市街地のマトリクスに関する研究、インドネシアの都市部における河川の野生動物移動のための生態的回廊のデザインに関する研究、街路樹についての生態系サービスから見た研究や剪定等の管理が街路樹の健全度に与える影響に関する研究、土地利用形態に応じた都市部の生態系サービスに関する研究、市街地周辺地域における林業景観に対する地域住民の意識に関する研究、などが論文として公表された。また、以上のような研究に加えて、屋上緑化への導入植物や環境要因の関係に関する研究、高松市内の楠並木に関する生態系サービスに関する研究、河川の河床構造と流れとの関係に関する考察なども研究成果として国際会議で発表された。さらに研究代表者は、それらの研究成果に基づいて考えられるコロナ禍によって都市民が求めるようになった緑の存在の在り方に関する招待講演を国際会議で行った。 以上から、全体としてみると、一部で遅れは生じたものの、研究はほぼ順調に進捗していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
一部の機器が年度内に購入できなかったために、調査項目の一部は翌年度に繰り越されたが、そのことによる研究の中止はなかったことから、研究は今後も予定通り推進できると考えられる。 すなわち、①に関しては植物が持つ環境緩和機能を種レベルで把握する。具体的には樹木種の降雨遮断機能の把握が挙げられる。②では、都市に進出し、定着しつつある鳥類に関する情報収集をさらに展開し、都市緑地との関係をより深く解析する。③に関しては、都市林要素の分布に注目した対象地域の抽出を継続し、可能な部分からそれらの連結性を高めるための潜在性に関する検討を行う。④に関しては、都市林要素のみならず、過去に有効な連結性を維持していたと考えられる水系に注目するほか、それに付随して存在したと考えられる生態系の検証も行う。⑤では、歴史的日本庭園における調査結果に基づいて、主に温熱環境の視点から環境緩和機能を視野に入れたデザインを解析する研究を継続する一方、主に公園を中心とする公共緑地の同様の機能の実態を把握する。さらに両者の比較からより具体的な公園デザインに関する提案を検討する。⑥に関しては都市域に散在する都市林要素間の連結性向上のための多様な要素の抽出とインベントリーの作成を目指したデータ収集を行う。 以上のほか、コロナ禍が続いているが、韓国・ソウル国立大学と中国・清華大学との交流をオンラインを通じて継続するほか、研究成果の公表をオンライン国際会議や論文投稿を通じて継続的に行う。
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Research Products
(18 results)