2022 Fiscal Year Annual Research Report
シカ食害が招く森林衰退:植物土壌フィードバックに着目して
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21H02233
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門脇 浩明 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (30643548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
立木 佑弥 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (40741799)
西岡 正恵 (石原正恵) 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (90594367)
松岡 俊将 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 講師 (70792828)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 植物土壌フィードバック / 土壌微生物 / メタバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、メインの実験である植物土壌フィードバック実験の結果はまだ得られていないが、科研費研究の柱となっている群集生態学的な研究に関連して、書籍2件(邦訳1件、英語百科事典1件)を出版した。邦訳としては、丸善出版より、世界標準の群集生態学の教科書である「ミッテルバッハ・マギル群集生態学」を出版した。また、英語百科事典Oxford Bibliographiesの記事Stochastic Processes in Ecologyを3年ぶりに大幅改訂を行い、出版した。「植物土壌フィードバック」に関連して、種生物学会 和文誌編集委員会企画シンポジウム「多種共存の生態学:植物の多様な共存機構を探る」にて招待講演を行ったほか、その他の学会でも招待講演を2件担当した(個体群世帯学会・生態学会)。生態学会では「シカによる過採食が土壌微生物群集に与える影響:広域シカ柵設置サイトにおける解析例」というタイトルでポスター発表を行い、参加者と有益な議論を行った。そのほか、共著でのポスター発表も1件あった。一般向けアウトリーチ活動として、NHK文化センター京都教室にて「植物の多様性のひみつに迫る:知られざる土壌微生物の役割」というタイトルで講演を行い、好評を博した。京都大学が主催する、高校生のための体験型科学講座「ELCAS」でも「群集生態学への招待」というタイトルで高校生5名を対象とし、研究成果を理解してもらうための実習形式の講義を行った。これらの報告や講演会を通じ、シカによる食害や研究サイトである芦生研究林における樹木群集の共存安定性に影響する要因について、研究の途中経過を報告することができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画に従い、ガラス温室で育成した実生のうち、十分な数をえることができた7樹種を対象として植物土壌フィードバック実験を実行した。はじめに温室で育成した実生について、各樹種5個体を繰り返しとし、無菌の鉢底石と赤玉土を入れたポット苗を約270個を準備した。次に、芦生研究林にてスギ・サワグルミ・外生菌根樹種(ブナ・ミズナラ・ミズメ)・カエデ類(イタヤカエデ、テツカエデなど)の土壌を各樹種土壌袋1袋分を採取し、ふるいがけ作業のあと、半数をそのままポット実生に接種する用、残りの半数をγ線滅菌を行ってから接種する用の接種源土壌とした。ポット苗に自種土壌・スギ土壌・サワグルミ土壌・外生菌根性樹種土壌、カエデ類土壌の接種(半数のポット苗にはγ線滅菌した土壌を接種)し、初期の実生の高さ・葉の枚数やなどの初期成長状況のデータを取得した。定期的に水やりやサイトのメンテナンスを行い、一部のサンプルでカラス被害があったが、おおむね順調に栽培実験は推移しているといえる。また、秋には前年度に採取できなかった樹種の種子を採集する為10回を超える種子採集調査を実施し、それらをについてガラス温室で表面殺菌後、播種実験を行い、次年度の栽培実験に備えていくつかの樹種を新たに実験に加えることができることとなった(樹木には凶作・豊作の年があり、一年ですべての樹種の実験を実施することはできない)。また、一部の樹種については前年度に播種した種子が休眠の打破によって一年後に発芽するという現象も確認することができ、これらも実験対象として用いることができ、さらに実験のスケールは大きくなっていくと考えられる。 前年度にシカ柵の内部と外部で採取した土壌微生物群集のメタバーコーディング解析の結果を解析し、生態学会にてポスター発表を行った。当該研究は学術論文としてまとめており、次年度には投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度採取・播種して得た実生を用いて、同様の植物土壌フィードバック実験を行う予定である。実験のプロトコルは前年度と同じで、対象樹種が異なるのみである。また、栽培が二年目となる実生については、収穫を予定している。収穫では、ポットから実生を取り出し、地上部と地下部は洗浄後、葉・茎・根の3部分に切り分けて、画像としてスキャンを行い、さまざまな形質を測定するためのデータとする。また、根の先端(細根)を採取し、ポット土壌の一部も採取し、それらは土壌微生物のメタバーコーディング解析を実施する。DNA抽出の段階は技術補佐員を雇用して進め、それ以降のPCRについては共同研究者と進め、MiSeqでのシーケンスは外注を予定している。このように収穫作業に伴い、フィールドワークとラボワークを短期間の間に効果的に進めるための体制を整える予定である。また、これまで得られている成果についても学術論文としてまとめる準備を進め、プロジェクトの完了へ向けて、プロジェクトを推し進める予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] シカによる過採食が土壌微生物群集に与える影響:広域シカ柵設置サイトにおける解析例2022
Author(s)
門脇浩明, 本庄三恵, 中村直人, 北川陽一郎, 石原正恵, 松岡俊将, 立木佑弥, 福島慶太郎, 阪口翔太, 井上みずき, 藤木大介, 境優, 高柳敦, 山崎理正, 徳地直子, 高橋大樹, 長澤耕樹, 増田和俊
Organizer
日本生態学会第70回全国大会
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