2022 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a fast and efficient production method for pollen-free sugi seedlings by liquid culture technology
Project/Area Number |
21H02244
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
丸山 毅 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (20353865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 真義 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40414479)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 液体培養 / 無花粉スギ / 不定胚形成 / 組織培養 / バイオリアクター / クローン増殖 / 遺伝子解析 / 遺伝マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度の研究実績は、以下のとおり。 ①初年度に得られた不定胚形成培養細胞を用いて、維持・増殖における液体培養条件を検討した。複数の培養細胞系統を対象に、塩類、糖類や成長調節物質(オーキシン、サイトカイニン、ペプチド)の変化による液体培地の培養細胞増殖に及ぼす影響を調べた。その結果、液体培地の組成の変化は細胞増殖に影響を与えるが、培地に対する反応は不定胚形成細胞系統によって著しく異なることが明らかとなった。 ②得られた培養細胞からの不定胚誘導を行い、胚分化能力の高い細胞を数系統選抜した。分化能力の高い細胞を用いて、不定胚成熟化における液体培養条件の検索を開始した。その結果、液体培養では、成熟に向かう細胞の発達が観察されたが、最終的に正常な子葉胚の形成までに至らなかった。引続き次年度は、不定胚の成熟化を改善させるための培養条件を再検討する。 ③不定胚への分化能力の高い不定胚形成細胞において特異的に発現する遺伝子を明らかにすることを目的に、発現遺伝子の網羅的解析(トランスクリプトーム)を行なった。4つの由来の異なる培養系統において、これまでに不定胚への分化能力が高いことが明らかとなった細胞系統および分化能力の低い細胞系統それぞれ3系統、合計で24系統の不定胚形成細胞よりRNAを抽出した。RNA-seqを行い、各サンプル4 Gb以上の発現遺伝子の配列データを得た。得られた配列データをスギの参照配列(SUGI ver. 1)にマッピングしたところ、それぞれ99.7%以上の配列をゲノム上にマッピングすることができた。また、RNA-Seqデータを活用してレトロトランスポゾンの解析を行い、合計26本のレトロトランスポゾンの配列が得られた。差次発現の解析では不定胚の誘導効率の高い細胞と低い細胞との間でレトロトランスポゾンの発現量を比較したところ、14本のレトロトランスポゾンの配列が有意な差次発現を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に設定した【課題1】液体培養技術による無花粉スギ苗生産法の効率化では、誘導した複数の不定胚形成細胞系統を用いて、培養細胞の維持・増殖における液体培養条件を検討し、培地に対する反応は不定胚形成細胞系統によって著しく異なることが明らかとなった。また、【課題2】分化能力の高い細胞系統の選抜法の開発では、遺伝解析や遺伝マーカーを開発するため、発現遺伝子の網羅的解析(トランスクリプトーム)やRNA-Seqデータを活用したレトロトランスポゾンの解析を進めた。これらにより、当年度に設定した研究目標をおおむねに達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の研究を実施する。 ①バイオリアクターによる細胞の増殖における培養条件を探索する。 ②液体培養による不定胚の成熟化を改善させるための培養条件を再検討し、得られた不定胚の発芽・植物体再生と苗化を進める。 ③細胞系統の解析や遺伝子の特定・遺伝マーカーの開発を進める。
|