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2021 Fiscal Year Annual Research Report

細胞壁成分分布の網羅的解析から迫る樹木の姿勢制御機構

Research Project

Project/Area Number 21H02257
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

吉永 新  京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 上高原 浩  京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
飛松 裕基  京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
津山 濯  宮崎大学, 農学部, 助教 (40786183)
岸本 崇生  富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
粟野 達也  京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
重冨 顕吾  北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords圧縮あて材 / 引張あて材 / リグニン / ヘミセルロース / ペクチン / モノクローナル抗体 / 木化 / G層
Outline of Annual Research Achievements

あて材形成の比較対象となる針葉樹のヒノキおよび、シリンギルリグニンの割合が高い広葉樹のシラカシの正常材について、リグニン中の結合様式に特異的に反応する4種類のモノクローナル抗体を用いて免疫蛍光標識した。得られた画像を解析して、細胞壁各部位での標識強度を比較する方法を確立した。連続切片の自家蛍光像からリグニン全体の分布も評価し、細胞壁の木化過程と結合様式の変化について考察した。その結果、ヒノキ仮道管二次壁では、8-8'型、8-O-4'型、5-5'型構造は未木化の段階で存在し、木化が進むと8-5'型構造も形成されること、コーナー部の複合細胞間層では未木化の段階で8-8’型構造が存在し、木化が進むと8-5型、8-O-4'型構造も形成されることが明らかになった。一方、シラカシの道管要素と周囲仮道管の二次壁では、5-5'型構造が木化初期に形成され、木化の進行に伴って8-O-4'型構造の割合が増加すること、木部繊維の二次壁では未木化段階で8-O-4'型、5-5‘型構造が二次壁外側に存在し、木化が進むと、8-O-4'型、5-5’型構造が内側に形成され、木化完了段階では二次壁全体で均一に形成されることが明らかになった。
ポプラの引張あて材より、滑走式ミクロトームを用いて横断切片を作製し、超音波処理によりG層を集める方法を検討し、ごく微量に道管要素の断片も混入するものの、純度よくG層を単離する方法を確立し、約200mgのG層を得た。単離されたG層を蛍光顕微鏡で観察したところ、ごく弱い自家蛍光がG層全体に観察された。
H型5-5’型構造を含む2量体モデル化合物を合成した。このモデル化合物はR4年度に新しいモノクローナル抗体作製のための抗原として使用する予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、リグニンのH核5-5'型構造、ジベンゾジオキソシン構造に対するモノクローナル抗体をを作製し、これまで申請者が作製してきた抗体と合わせてリグニンの空間定量ツールセットを確立する。傾斜に対する反応の異なる針葉樹と広葉樹の多様な種において、傾斜した幹の上側と下側にできる材の様々な壁層について、リグニンの化学構造および非セルロース性多糖類の壁層ごとの分布の違いを、 特異抗体を用いた免疫標識法、化学分析を組み合わせて、網羅的、定量的に評価する。それにより、リグニンの化学構造と細胞壁の機能との関係、リグニンと他の多糖類との関係につ いて明らかにする。その知見をもとに樹木の姿勢制御機構を解明することを目的とする。
R3年度はまず、新しくモノクローナル抗体を作製するための抗原として、H核5-5'型構造を含むモデル化合物を合成した。さらに針葉樹、広葉樹ともにあて材形成の比較対象として重要となる正常材について、既存の4種類のリグニン結合様式に対するモノクローナル抗体を用いて標識し、標識強度の比較方法について検討した。蛍光標識画像から特定のチャンネル画像を取得し、細胞壁各部位での標識強度を比較する方法を確立した。連続切片の自家蛍光像におけるリグニン全体の分布の評価と合わせることで、細胞壁の木化に伴うリグニン化学構造の変化を追跡することが可能となった。この方法では標識強度が大きく異なる場合、撮像時の露出時間を変更する必要があるという問題点も明らかになった。
これまでの研究により、ポプラのG層に8-O-4'型構造を持つリグニンが微量に存在することが示唆されている。この点を化学分析により確認するため、ポプラG層を純度よく単離する方法を確立した。

Strategy for Future Research Activity

(1)H核からなる5-5'型構造に対するモノクローナル抗体の作製
R3年度に合成したH核同士からなる5-5'型構造を持つモデル化合物をジアゾカップリングを用いてタンパク質と結合させて複合体を調製する。この複合体を抗原として外部委託によりマウスモノクローナル抗体を作製する。得られたハイブリドーマから、H核からなる5-5'型構造に反応し、G核からなる5-5'型構造や、他の結合様式に反応しない抗体を産生するハイブリドーマを選別する。有望なハイブリドーマを用いて外部委託により無血清大量培養により高濃度の抗体を含む培養上清を得る。得られた培養上清について、競合阻害ELISA法などにより、抗体の特異性を明らかにする。
(2)G層を持つ広葉樹引張あて材の免疫標識と標識の定量法の確立、化学分析
針葉樹圧縮あて材と、G層を形成する広葉樹引張あて材について、傾斜の上側と下側の木部および師部をそれぞれリグニンの部分構造に対する既存の4種類のモノクローナル抗体および非セルロース性多糖類に対するモノクローナル抗体で標識する。昨年度は蛍光標識画像から標識強度を評価する方法を検討したが、今年度はそれに加えて、標識強度を表面増強ラマン分光法(SERS)を用いて定量的に評価する方法を確立する。また、同じ試料の傾斜上側と下側の木部および師部について化学分析し、化学構造の違いを明らかにする。
(3)単離したG層の化学分析
昨年度、G層を形成する広葉樹引張あて材について、横断切片の超音波処理によってG層を大量に単離する方法を確立した。今年度は単離したG層についてチオアシドリシス分析、NMR分析によってG層中に微量に含まれるリグニンの化学構造を明らかにする。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Presentation (1 results)

  • [Int'l Joint Research] フランス国立農業研究所(INRAE、オルレアン)(フランス)

    • Country Name
      FRANCE
    • Counterpart Institution
      フランス国立農業研究所(INRAE、オルレアン)
  • [Presentation] モノクローナル抗体を用いたヒノキおよびシラカシ正常材細胞壁木化過程の解2022

    • Author(s)
      中川拓海,吉永 新,杉山 淳司
    • Organizer
      第72回日本木材学会大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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