2022 Fiscal Year Annual Research Report
Why does diarrheal shellfish poisoning occur only in northern Japan?
Project/Area Number |
21H02274
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
長井 敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (80371962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 仁奈 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00617251)
栗林 貴範 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 法人本部, 主査 (10536634)
中山 奈津子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (20612675)
松嶋 良次 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), グループ長 (80371847)
宮園 章 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 中央水産試験場, 専門研究主幹 (00536625)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 下痢性貝毒 / Dinophysis fortii / Dinophysis acuminata / DTX-1 / オカダ酸 / 海水流動モデル / 粒子追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画は、昨年度に引き続き、Dinophysis属の単離培養を行い、毒分析、集団遺伝学解析に向けたサンプル調整を行う。北方集団、西日本集団間の毒生産性の差異を明らかにする。また、高毒成分が検出されたDinophysis属集団の起源となる海水について、海水流動モデルを用いた逆粒子追跡シミュレーションを行い、その海水の起源特定を試み、北方起源説の是非を検証することである。昨年度と同様に、Dinophysis属の培養株の確立を行い、D. fortiiでは、北海道噴火湾(24株)、北海道増毛湾(24株)において、D. acuminataでは、三河湾(24株)および大分県猪串湾から単離した培養株(30株)の確立に成功した。これらの株について、LS/MSを用いて毒分析を行った。拡大培養を行い、集団遺伝学解析に向けた集藻を完了した。さらに、下痢性貝毒高毒集団の発生起源を明らかにするため、下痢性貝毒の高毒発生年の2019年と非発生年の2015年および弱毒発生年の2016年について海水流動モデルを用いた逆粒子追跡実験を試みた。加えて、過去32年間の北海道日本海北部海域における海水密度、貝毒モニタリングデータなどを用いて検討したところ、高毒化の必要条件として、沖合の冷水性株の到来が必要であり、冷水性株の出現条件として4月に日本海中層系水の勢力が強いことが必要条件であることが示され、高毒株の起源が日本海中層水系であることを明らかにすることができた。これまでの毒分析の結果、北海道周辺から単離された株が高毒成分を生産するのを確認している。本知見は、本研究課題にある「何故、下痢性貝毒は北日本でのみ発生するのか?」の解答として、「北海道周辺海域に、高毒成分を産生する集団が分布する」という仮説が正しいことを裏付ける結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この2年間、北海道、西日本周辺海域から、Dinophysis属を単離し、特にD. fortiiに関しては、集団遺伝学解析の実施が十分可能なサンプルを収集することができた。また、毒分析についても、北日本から単離されたDinophsisは高毒成分であるDTX1を高濃度で生産する結果が得られている。本年度、下痢性貝毒の高毒発生年と非発生年について、海水流動モデルを用いた逆粒子追跡実験を試みた。加えて、過去32年間の北海道日本海北部海域における海水密度、貝毒モニタリングデータなどを用いて検討した結果、高毒株の起源が日本海中層水系であることを突き止めた。本成果は、これまで長い間、不明であった「下痢性貝毒は何故、北日本でのみ発生するのか?」に対する明確な解答であると言っても良い。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、MIG-seqによるD. fortiiの集団遺伝学解析を行う予定である。以上、毒分析、集団遺伝学解析、海水流動モデルの逆粒子追跡解析の結果を統合して、何故、下痢性貝毒は北日本でのみ発生するのかに対する科学的な解析に基づいた解答を提示したいと予定している。
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