2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel smart biosensing system for fish
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21H02282
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
遠藤 英明 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50242326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呉 海云 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (70802065)
村田 政隆 公益財団法人函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター), 研究開発部, 研究主査 (40505707)
大貫 等 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60223898)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 魚類 / スマートセンシング / ストレス / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,次世代に対応できる魚類の生体計測を念頭に,生体内の生理情報の可視化,計測,伝達を可能とするスマートバイオセンシングシステムの創出を目的とする.今年度は魚のストレス応答モニタリングのためのグルコース測定用フレキシブル酵素センサの製作,雌雄を判別するための11-Ketotestosterone(11-KT)測定用イムノセンサの製作を行うと共に,それらパラメータをリアルタイムモニタリングするための通信システムの基礎的研究を行った.まず,魚のストレス指標となるグルコースを測定するためのフレキシブル酵素センサの開発を試みた.魚類の腹膜や表皮などへバイオセンサを留置する場合,生体に優しいフレキシブルな特性をもつバイオセンサが必要となる.そこで,ナノ粒子状の金属インクを薄層樹脂フィルム上にインクジェットプリンターを用いて塗布・印刷することにより,弾力のあるフィルム状電極を作製した.この電極にグルコースと特異的に反応するグルコースオキシダーゼを固定化することにより,形や大きさを自由に形成できる酵素センサが構築できると考えた.次に幼魚期における雌雄判別を可能にするための免疫センサの開発を試みた.魚類の雌雄判別には,血漿試料中に含まれるステロイドホルモンの一種である11-KTが指標となることが知られいる.そこで,ディスク型金電極にウサギ由来の抗-11-KT抗体と高導電性を有する単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を固定化することにより,11-KT測定用イムノセンサを作製した.そして抗原抗体反応前後における電極表面の状態変化を,サイクリックボルタンメトリーで電気化学的に解析することで,魚の雌雄判別を試みた.さらに,スマートバイオセンシングを可能にするための基礎的研究として,魚体に装着されたバイオセンサと陸上の端末との間を双方向で通信が可能なシステムの開発を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレス応答用フレキシブル酵素センサについては,グルコース濃度の上昇に伴ってセンサの出力電流値が増加することが確認さたため,本センサを用いたグルコースの定量が可能であることがわかった.このセンサを魚の眼球後方外膜に存在する間質液に留置し,魚体にストレスを負荷し,その応答をモニタリングしたところ,ストレス負荷に応じた出力電流値の変化が認めらた.次に,雌雄判別のための免疫センサについては,11-KT濃度とセンサの電流減少率との間に良好な直線関係が得られた.本センサは,抗体と共にSWCNTを固定化することにより,13.2 pmol/mlまでの測定が可能となり,SWCNTを固定化していないセンサに比べ,その値を約10倍向上させることができた.本センサを用いてティラピア血漿中の11-KTを測定したところ,ELISAで得られた値との間に良い相関関係が認められたことから,魚類の雌雄判別が可能であることが確認された.一方,今後のスマートバイオセンシングを可能にするために,双方向通信(センサ⇔端末)技術を用いて測定対象魚の識別が可能な通信システムを製作した.このシステムを2尾の魚に各々装着し,同じ水槽内で遊泳させることにより,LEDの点灯/消灯による測定対象魚の識別を試みると共に,LED点灯色の変化によるストレス応答モニタリングを試みた.その結果,LEDを点灯/消灯させることにより,測定対象魚を識別しながら,各個体のストレス応答を同時にモニタリングすることができた.また,ストレス応答の大小に応じてLEDの点灯色も変化させることができた.これにより,測定対象魚を判別しながら,複数個体のストレス応答を視覚的にモニタリングすることが可能となり,次年度以降のスマートバイオセンシングシステム構築に向けた基礎的基盤を構築することができた. 以上の理由から研究の進捗はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,以下の計画にしたがって研究を遂行する. 1)低電位レドックスポリマーを用いたバイオセンサの製作:これまでのグルコース測定用バイオセンサは,測定に高い酸化還元電位を印加する必要があったため,グルコースと共存する他の物質(生体内夾雑物質)がこの電位により同時に酸化されることで,グルコース濃度の測定に影響を及ぼすことがしばしばあった.そこで今年度は,それら生体内夾雑物質の影響を受けにくい低電位での測定を可能にするために,レドックスポリマーを用いたメディエータ型バイオセンサを新たに考案し,これを用いた魚のストレス応答測定を試みる. 2)フィルム型フレキシブル酵素センサによるストレス応答測定:昨年度に作製したフレキシブル酵素センサを実際の魚に適用し,そのストレス応答測定の可能性について検討する.本センサと硬質素材から成る従来の針型バイオセンサを魚の左右のEISF中にそれぞれ留置し,各種ストレッサーを魚体に負荷し,両センサの出力電流値を比較・検討しながらストレス応答モニタリングを行うことで本センサの特性を評価する. 3)水中におけるQRコードの情報伝達に関する検討:本研究では,新たな伝達手段にQRコードの応用を試みる.今年度は,バイオセンサと連動させた際の水中での最適使用条件を検討するとともに, QRコードの認識に及ぼす水中濁度や水反射の影響を調べる.QRコード表示用デバイスには,液晶ディスプレイを搭載したモジュールM5Stackを用いる.まず,供試魚にQRコードを表示させたM5Stackを装着し,水槽内で遊泳させながら,スマートフォンを用いてQRコードの読み取りを行い,認識できる最適条件を検討する.また,濁度標準溶液を用いて透視度から検量線を作成し,飼育環境下に想定される濁度とQRコード認識可能最大距離の関係を調べると共に水反射の影響についても併せて検討する.
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Research Products
(11 results)