2022 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動緩和策とフード・セキュリティの関係に関する数量経済的研究
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21H02294
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 勝宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80225698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 澄憲 麗澤大学, 経済学部2, 教授 (10150624)
國光 洋二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 再雇用職員 (30360390)
佐藤 秀保 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (70805118)
横沢 正幸 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80354124)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気候変動 / フードセキュリティ / 収量変動 / 国際価格 / 非関税障壁 / ウクライナ侵攻 / 降水パターン / 応用一般均衡分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の人口増加と開発途上国の経済成長のもとで将来の食糧需給は逼迫するものと考えられる。また、気候変動は食糧生産量の増加率の減少や異常気象に よる収量変動を招く可能性が非常に高く、フードセキュリティを脅かす。そこで、本研究では気候変動とその緩和策が食糧生産や国際価格変動に及ぼす影響を評価するとともに、フードセキュリティへの含意について検討することを課題のひとつとしている。令和4年度は、気候変動と食糧生産との関係を中心に研究を行った。 気候変動と穀物生産量との関係は、単収への影響を通して分析されることが多い。稲作の場合には降水パターンと作付面積との関係も重要である。スリランカでは、水不足への対応策としてため池灌漑が発達してきた。作付面積は田植期の貯水量に依存することに着目し、降水パターンと作付面積の関係を分析し、米生産に及ぼす影響を分析した。逆に、洪水も収量に影響を及ぼす可能性が高いため、日本のデータを用いて洪水の減収効果について検討した。 収量変動は、国際貿易を通して国際価格にも影響を及ぼすため、主要4農作物の収量変動予測を用いて、世界各国の農産物価格の変動がどの程度予測可能かを検討した。また、気候変動が果樹生産に及ぼす影響についての分析を行った。 食料安全保障という視点からはロシアのウクライナ侵攻が穀物市場に及ぼした影響も無視することができない。そこで、穀物の国際価格上昇が、日本の穀物・飼料自給率に及ぼす影響について分析した。また、ウクライナ侵攻による当該国の小麦輸出減少が国際価格に及ぼす影響について、各国が生産量を調整できない場合と、価格上昇に応じて増産できる場合について比較検討した。 令和5年度以降に行う通商規律分析の一環として、農業食品産業における世界各国の非関税障壁(植物検疫等を除く非技術的要因)の削減が日本の農産品の輸出や国内生産に及ぼす影響についても分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度はコロナ感染症の影響で研究の進捗が遅れていた。令和4年度も、海外調査を行いにくいという意味では進捗が遅れてはいるものの、気候変動の影響について分析するという意味では概ね順調に研究が進捗している。令和5年度以降は、環境負荷を軽減する農法と環境負荷を考慮した国際通商規律のあり方について検討してゆく予定である。 また、国際応用一般均衡分析に用いるデータベースが令和5年4月に更新されたため、これまでの研究成果の妥当性の再確認が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に研究が進んでいるとはいえ、国際応用一般均衡分析に用いるデータベースが令和5年4月に更新されたため、これまでの研究成果の妥当性の再確認が必要となる。新しいデータベースを入手後、再検討作業を行いたい。また、本研究の第二の課題である環境負荷とフードセキュリティの関係については、エコロジーと整合的な農業生産を令和4年にアグロエコロジーの生産性に関するサーベイを行ったが、国・地域別にその効果にばらつきが大きく、国際応用一般均衡モデルのフレームワークでは困難に直面する可能性があり、纏め方に工夫を要すると思われる。気候変動・環境負荷と穀物収量の分析を強化するために,研究分担者を一名増加する予定でである。
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Research Products
(8 results)