2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物利用型有用タンパク質生産における環境制御:生理学と工学の両面からのアプローチ
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21H02313
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20547228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富士原 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30211535)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 植物利用型有用タンパク質生産 / 環境制御 / 一過性遺伝子発現法 / ワクチン抗原 / ベンサミアナタバコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)遺伝子導入後の気温が植物体に生じるストレスの程度および有用タンパク質含量に及ぼす影響の検討、(2)遺伝子導入時の植物の状態が導入後の有用タンパク質生産量に及ぼす影響、および(3)緑色蛍光タンパク質(GFP)を用いた目的タンパク質含量リアルタイムモニタリング、を実施した。(1)では、有用タンパク質としてインフルエンザヘマグルチニン(HA)を用いて、遺伝子導入後の気温がベクター導入および外来タンパク質の過剰発現に起因すると推察される葉の壊死の程度、およびHAの生合成・分解に関わると推定される各種遺伝子の転写産物レベルの経時変化を調べた。mRNAレベルの定量評価にはRT-qPCR法によるΔΔCq法を採用した。高温条件では、小胞体ストレスによって葉の壊死が生じ、これによってHAの分解が促進され、葉HA含量の経時変化パターンが低温条件とは異なるものとなったと推察された。(2)では、遺伝子導入前栽培を温室(太陽光下)またはチャンバー(人工光下)で行なった場合の、導入後のHA生産性を比較したデータを詳細に解析した。温室条件では、おもに日積算PPFDの季節変動により、遺伝子導入時の植物バイオマス(および含有資源量)等の生産バッチ間変動がチャンバー条件よりも大きいことにより、株あたりHA生産量のバッチ間変動も大きくなることを示した。(3)では、昨年度に開発したGFPのリアルタイムモニタリングシステムのプロトタイプを用いて、遺伝子導入後の気温が葉GFP含量の経時変化に及ぼす影響を非破壊で評価した。遺伝子導入後の気温によって葉GFP含量がピークに達するまでの日数が異なることを明らかにするとともに、個体あたりの目的タンパク質含量の環境要素応答を評価する上では、葉位別の目的タンパク質含量の把握が重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書および本年度の交付申請書に記載した研究実施計画に、おおむねしたがって進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
「(1)遺伝子導入後の植物に生じるストレスの実態および環境制御による緩和効果の機構解明」では、本年度に得られた成果を外部に公表するための取りまとめを進める。「(2)有用タンパク質生産量に関わる遺伝子導入前の植物体内資源物質の探索」では、候補物質の探索の前段階として、さまざまな遺伝子導入前栽培条件が遺伝子導入後の有用タンパク質含量に及ぼす影響を、チャンバー実験によってスクリーニングする。「(3)有用タンパク質含量リアルタイムモニタリングシステムの確立」では、昨年度の実験の追試験を実施し、結果の再現性を確認する。
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