2021 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム安定性制御分子を利用したマウス染色体再編成の最適化と臨床応用の基盤構築
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21H02395
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
岩田 悟 中部大学, 実験動物教育研究センター, 助教 (70722891)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゲノム安定性 / ゲノム編集 / 染色体再編成 / 染色体異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の染色体断端からなる複雑な染色体再編成(Complex Chromosome Rearrangements: CCRs)は、がんや先天性疾患の患者で度々検出される染色体構造異常である。それら疾患の発症機序解明や治療法の開発には適切なモデル動物の樹立が必須である事は論を待たないが、深刻なゲノム不安定性や細胞死が誘導されるため困難であった。本研究では、DNA修復の過程でRad51(相同組換え(HDR)因子)を分解するRecql5を破壊すると、メガベース(100万塩基対) 単位の染色体逆位 (染色体の一部が反対方向となった染色体異常) や、CCRsモデルマウスが受精卵へのゲノム編集により高効率に作製できた。今回の研究成果は、DNA修復経路を遺伝学的に操作することでCCRsモデルマウスを効率的に作製できる可能性を示しただけでなく、染色体構造異常の影響を研究するための有望なアプローチとなると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画では、1) ゲノム安定性制御分子を遺伝的に改変することで高精度・高効率に染色体再編成を誘導する新手法を確立し(2021-2022 年度)、それを用いた 2) 複雑な染色体再編成 (CCRs: Complex Chromosome Rearrangements) の誘導と解析を進め、本手法が有効に機能することを確認した上で(2023年度)、3) 臨床応用へ向けてゲノム安定性制御分子の機能を制御することで染色体異常を正確に修復する汎用型プロトコルを開発する(2024年度)。 現在までに、野生型マウスを用いた実験ではCCRsの誘導が困難な一方、DNA修復の過程でRad51を分解するRecql5をノックアウトしたマウス系統ではメガベース単位の染色体逆位や、CCRsが高効率に誘導できている。それゆえ、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記のCCRsマウスを解析すると同時に、確立した新手法を応用したマウスの生体内における染色体異常の修復ができるかを試みる。標的領域は、がんや発生異常を起こす変異が集中する領域とし、それぞれgRNAおよび染色体断端が再度連結するために必要なssODNを設計、in vivo電気穿孔法を用いて狙った位置の染色体異常を修復する。標的 guide RNA (gRNA) は、融合遺伝子データベースFusionGDB (ccsm.uth.ed u/FusionGDB/) より配列情報を入手し、ゲノム断端が順方向となった時に相補的な結合をするよう、DNA配列編集ソフトApEで設計する。さらに、ゲノム断端が互いに順方向となるようにHDRを介して再度連結するために必要なのり付け配列であるssODN (一本鎖オリゴ) をApEで設計する 。今回、ssODNの各末端をS化 (硫黄化) することで細胞内に存在する核酸分解酵素への耐性を付与する実験条件も加え、染色体異常の修復効率への影響を調べる。 遺伝子型検査は、PCR、サンガーシーケンスにより検証する。さらに、予期せぬ構造がないか次世代シーケンサー (NGS) にて解析する。以上の解析から正確かつ高効率に染色体異常を修復する条件を見出す。
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