2022 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法を用いたGタンパク質共役型受容体によるシグナル制御機構の解明
Project/Area Number |
21H02410
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幸福 裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80737940)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 核磁気共鳴法 / 膜タンパク質 / Gタンパク質共役型受容体 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ケモカイン受容体のNMR解析条件の確立 GPCRの一種であるケモカイン受容体における、Gタンパク質経路とアレスチン経路の活性化機構を解明するため、ケモカイン受容体のNMR解析を進めた。まず、メチオニンメチル基を選択的に標識したケモカイン受容体を調製し、NMRスペクトルを測定した。しかしながら、内在性のメチオニン残基のシグナルでは、リガンドによる変化が小さく、詳細な解析が困難であることがわかった。そこで、ケモカイン受容体の膜貫通領域の様々な部位に、変異によりメチオニン残基を導入し、NMR解析をおこなった。その結果、阻害剤と作動薬で化学シフトが異なるメチオニンプローブを複数見出すことに成功した。これにより、ケモカイン受容体のどの領域が構造変化することで、活性化が起こるのかを解明するための、NMR解析条件が確立できた。 2.β2ARの構造モチーフの解析 GPCRのGタンパク質経路とアレスチン経路の活性化機構の解明において、GPCRに共通するメカニズムはこれまで明らかになっておらず、その解明が望まれている。そこで、構造生物学的解析が進んでいるGPCRであるβ2アドレナリン受容体(β2AR)のNMR解析もあわせて進めることとした。β2ARには、安定同位体標識試料が多く得られるという利点がある。そこで、他のGPCRでは測定感度の観点から利用が困難な主鎖アミドプローブの観測を含めて、様々な標識法を検討した。その結果、GPCRに共通する構造モチーフ(PIF, DRY, NPxxY)について、それぞれのモチーフの構造変化を反映すると考えられる、NMRプローブを見出すことができた。本結果により、β2ARの各シグナル伝達経路の活性化メカニズムを、モチーフの構造変化の観点から解析するための基盤が確立できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はケモカイン受容体のNMR解析をおこなうことを目指していた。ケモカイン受容体のNMR解析は、収量の少なさに課題が残るものの、プローブの確立などには成功しており、次年度以降に大きく進展することが期待される。また、β2ARのNMR解析にも前倒しで着手しており、全体としては概ね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
GPCRのGタンパク質・アレスチン経路の活性化機構の解明に向けて、ケモカイン受容体およびβ2ARの解析を進めている。本年度は、NMR解析条件の確立が完了したことから、次年度では、シグナル伝達のプロファイルが様々に異なる状態のNMR解析を進める予定である。ケモカイン受容体・β2ARとも、活性の異なるリガンドが結合した状態解析を進める。また、β2ARについては、活性が異なる変異体も報告されていることから、その解析も進める。一方で、ケモカイン受容体のNMR解析は、安定同位体標識試料の収量の低さが課題となっている。これまで、ケモカイン受容体の試料は昆虫細胞発現系を用いて調製してきたが、近年、膜タンパク質の発現に哺乳細胞発現系が用いられるケースが多くなっている。そこで、ケモカイン受容体の哺乳細胞発現により、収量が向上するか検討をおこなう。
|