2021 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子HGFによるMet受容体活性化機構の構造学的研究
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21H02416
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有森 貴夫 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (80582064)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞増殖因子HGFは6つのドメインで構成されており,その5番目と6番目のドメインの間が切断されることで活性化される.しかし,切断部位を含むHGFの構造情報は一切なかったため,プロテアーゼ切断によるHGFの活性変換機構は不明であった.そこで本研究では,5-6番目ドメインを含む断片の非切断型および切断型の結晶構造解析を決定し,不活性型HGFから活性化型HGFへの構造変化を明らかにすることを目指した.またそれと同時に,全長HGF(活性化型)と受容体であるMet(細胞外領域)の複合体の構造をクライオ電子顕微鏡により決定することも目標にしていたが,本年度はじめに海外のグループから同様の構造が4Å程度の分解能で報告されたため,方針を転換し,本年度は前述の結晶構造解析に注力することで,未だ不明である不活性状態のHGFの構造を明らかにすると同時に,より高分解能の活性化型HGFの構造情報を取得することを目指した.先行研究において作製した活性化状態を容易に制御できるように改変したHGF断片を用い,さらに小型抗体Fv-claspを結晶化シャペロンとして利用することで,これまでに活性化型HGFでは2.4Å分解能,不活性型HGFでは3.69Å分解能のX線回折データの取得に成功している.活性化型HGFについては本年度中に構造の精密化が完了し,不活性型HGFについても概ね最終構造と言えるところまで精密化を進めることができた.不活性型HGFの分解能はそれほど高くはないが,慎重に精密化を進めた結果,ごく一部のループ領域を除いたほぼ全領域で少なくともCαトレースについては信頼できるモデルを構築することができた.得られた構造から,不活性型と活性型HGFでは複数のループ領域に明らかなコンフォメーションの違いがあることが分かり,プロテアーゼ切断に伴うHGFの構造変化を可視化することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は変更を余儀なくされたが,結果として不活性型HGFおよび活性化型HGFの結晶構造解析については大きく前進させることができた.これまで構造情報が全くなかった不活性型HGFについては,低分解能ながら結晶構造を決定することに成功し,活性化型HGFについても既報のものより高分解能の構造情報を取得することに成功した.両者の構造には明確なコンフォメーションの違いが見られており,本研究の目標の一つであるHGFの活性変換機構については,明らかになりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは不活性型HGFの構造の精密化を早急に完了させる.その後,本研究で決定した構造と既報の構造も合わせ,HGF自身の活性状態の変換からMetの活性化に至るまでの一連の構造モデルを構築する.さらに,本研究で得られた構造からHGFの活性に重要であることが予想される重要なアミノ酸残基については変異体を作製し,その変異体の活性測定を行っていく.
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