2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of genomic functions involving species-specific vocal learning and production
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21H02456
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和多 和宏 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70451408)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 発声学習 / 学習臨界期 / 遺伝子発現 / 時系列制御 / 鳴禽類ソングバード / AAV |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、種間のゲノム配列上の違いが、いかにして脳内に共通して存在する神経回路における遺伝子発現に影響を与え、その結果、個体レベルにおける種特異的発声学習行動の生成につながり得るのかを明らかにすることを目的としている。当該年度においては、コロナウイルス感染拡大による研究活動制限を受けたが、概ね当初予定した通りの実験を実施できた。また、そこから得有られた研究成果は期待以上のものがあった。その大きな起点になったのが、新規シングルセルRNA-seq解析方法による、複数個体混合サンプルをシークエンス後に個体識別できることに成功したことである。これによって、研究申請時に想定したサンプル数よりも多くシングルセルRNA-seqを施行でき、当初よりも多くの実験サンプル比較解析ができた。当初の研究計画に沿って、鳴禽類ソングバード3種(zebra finch, owl finch, cherry finch)の発声運動回路を構成する歌神経核HVC, RAの新鮮凍結サンプルを用いてシングルセルRNA-seqを実施した。その結果、種特異的遺伝子発現の違いが、今回フォーカスしたすべての種で、グルタミン酸作動性興奮性投射ニューロンに蓄積していること、またその種特異的な遺伝子発現を受けている遺伝子群のなかには、系統進化過程で複数回発現変化を受けている遺伝子が存在することが明らかになった。現在、これらの遺伝子がどの染色体に位置するのか解析を進めている。また、この細胞タイプレベルで観察された種差が歌発声学習臨界期初期には観察されるが、学習臨界期後の成鳥時に観察される発現パターンとは異なるために、発声学習臨界期間中においても遺伝子発現パターンの種特異的なダイナミクスを維持していることを示唆する結果を得た。これは、歌学習発達過程にも種特異的な発声パターンの制御メカニズムが存在することを意味している可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による研究活動制限を受けたが、概ね当初予定した通りの実験を実施できた。また、新規シングルセルRNA-seq解析方法によって、複数個体混合サンプルをシークエンス後に個体識別できることに成功した。これによって、研究申請時に想定したサンプル数よりも多くシングルセルRNA-seq、ATAC-seqを今後施行できることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
鳴禽類ソングバードの脳内歌神経核における細胞タイプ別遺伝子発現解析を、進化系統樹の2つのクレードに位置する種を4種に増やしてシングルセルRNA-seq解析及び、シングルセルATAC-seq解析を実施していく。これにより、細胞タイプ別の種特異的機能発現に関わると推定されるオープンクロマチン領域、及び遺伝子候補を選抜する。また、平行して複数動物種間比較で有意な種差を示す遺伝子群の過剰発現、遺伝子ノックアウト実験のコンストラクト作製に取り掛かる。
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Research Products
(8 results)