2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms which determine the fate of paternal organelles in embryos
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21H02472
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐藤 美由紀 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (70321768)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー / 線虫 / 生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C.elegansを用いた研究により、われわれは精子に由来するミトコンドリアなどの父性オルガネラが、受精後に選択的オートファジーによって受精卵から排除されること、それがミトコンドリアDNAの母性遺伝の仕組みとして働くことを見出した。さらに父性オルガネラを選択的にオートファジーへと導くアダプター分子・ALLO-1の同定に成功しているが、ALLO-1が何を認識して父性ミトコンドリアに局在化するのか、またなぜ父性ミトコンドリアでのみそのような違いが生まれるのかはよくわかっていない。本研究では、ALLO-1がどのように父性ミトコンドリアを見分けて局在化するのかに注目し、その仕組みを遺伝学的・生化学的手法を用いて明らかにする。生化学的手法としては、精子・卵子からミトコンドリアを単離し、比較プロテオミクスによりタンパク質の組成や修飾状態(ユビキチン化やリン酸化など)の違いを明らかにする。そのためのサンプル調製法として、サイズによって精子ミトコンドリアを分画する方法と、特定の細胞種でHAなどのタグにより標識されたミトコンドリア外膜タンパク質を発現し、特定の組織のミトコンドリアのみを免疫沈降により回収する方法を計画し、その予備実験を行った。また、遺伝学的方法ではALLO-1の局在性に異常を示す変異体のスクリーニングを行うための条件検討を行った。加えて、精子形成過程のミトコンドリアの形態や質を詳しく解析するためのツールを整備した。今後はこれを用いて分解の運命がいつどのように決定されるのかの手がかりを探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)精子と卵子のミトコンドリアの比較プロテオミクスに向けた条件検討 線虫では受精卵を回収することは可能であるが、その他の組織については個別に回収することが困難である。そこでまず、精子だけを単離する方法を確立するために、線虫破砕液を異なるメッシュサイズのナイロンフィルターを通すことで分画する方法を試みた結果、精子をある程度まで濃縮することが可能であった。今後はこれをスケールアップし、単離精子からミトコンドリアを分画する方法を検討する。この方法に加えて、ミトコンドリアを免疫沈降で回収する方法も検討するため、ミトコンドリア外膜タンパク質にHAタグを付加したマーカーを卵子で発現する線虫を入手した。また、同様のマーカーを精子特異的プロモーター下で発現する線虫株の作製を試みた。しかし、今回作製した融合タンパク質は精子ではミトコンドリアに正しく局在化できないことが判明したため、異なる外膜タンパク質を用いて再度検討を行っている。 2)遺伝学的スクリーニング GFP-ALLO-1b発現株を変異原処理し、初期胚でGFP-ALLO-1bの局在化異常を指標に変異体のスクリーニングを行うためのパイロット実験を行った。その結果、GFPの輝度が低いため判別に時間がかかりすぎ効率が悪いことががわかった。そこで、判定が比較的容易なGFP標識された精子ミトコンドリアの受精卵での分解異常を指標に一次スクリーニングを行い、二次スクリーニングとしてALLO-1bの集積が起きているかどうかを確認することで、ALLO-1bの上流・下流いずれの変異体であるかを区別するストラテジーへ変更し、スクリーニングを開始した。 3)精子の分化過程でのミトコンドリアの形態や質の変化を経時的に追跡するためのROSやカルシウムイオンインジケーター発現株を作製またはストックセンターから取り寄せ、解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、比較プロテオミクスのためのサンプル調製法を確立し、質量分析を行う。また、遺伝学的スクリーニングについては二段階スクリーニングのパイロット実験を行い、良好な結果が得られたので本格的なスクリーニングを開始する。できるだけ多くの変異体をスクリーニングできるように効率化を図りつつ進める。精子の分化過程のミトコンドリアの変化については、マーカー発現株や各種染色試薬を用いて詳細な検討を行う。
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