2021 Fiscal Year Annual Research Report
USP8による多彩なメンブレントラフィック制御の分子機構とその生理的・病理的意義
Project/Area Number |
21H02474
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
駒田 雅之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10225568)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | メンブレントラフィック / 脱ユビキチン化酵素 / USP8 / クッシング病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脱ユビキチン化酵素ubiquitin-specific protease 8(USP8)が種々のメンブレントラフィック経路を制御する分子機構の解明を目指している。 エンドソームを介したメンブレントラフィックのUSP8による制御については、まず、エンドソームに存在するR-SNAREであるVAMP2とVAMP8、およびこれらと複合体を形成するQ-SNAREに着目して解析を進めた。その結果、USP8はVAMP2、VAMP8、STX7を脱ユビキチン化することがわかった。STXと複合体を形成しているVAMP8を免疫沈降法で濃縮したところ、意外なことに複合体内のVAMP8のユビキチン化が検出された。 HIV1型レンチウイルスの感染細胞からの出芽の制御については、これまでに、Gagがユビキチン化を受けることが報告されていた。今回、細胞染色によりUSP8とGagが核周辺および細胞膜上の斑点状の領域で共局在すること、免疫沈降によりUSP8とGagが結合することを明らかにした。USP8の発現抑制によりGagのユビキチン化が増加したことから、USP8がGagを脱ユビキチン化することがわかった。さらに、USP8の活性阻害により、ウイルス産生細胞におけるGagとウイルスRNAの結合量が増加し、ウイルス粒子に動員されるウイルスRNAの量も増加した。 クッシング病で見られる変異型USP8は、ACTHの分泌を過剰に促進して疾患発症を引き起こす。以前、我々はUSP8に自己阻害ドメインが備わっていることを見つけていた。2021年度は、クッシング病で見られる変異によってUSP8は自己阻害がかからない状態となり、恒常的に活性化することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、まず、エンドソームのメンブレントラフィックに重要なSNAREタンパク質のいくつかがUSP8の標的タンパク質であることを明らかにすることができた。さらに、当初はユビキチン化がSNARE複合体の形成を阻害すると想定していたが、意外にもユビキチン化がSNARE複合体の解離を阻害している可能性が示唆された。これを明確に示すことができれば、メンブレントラフィックの研究分野における重要な発見になると考えている。 レンチウイルスの出芽に関する解析では、ウイルス構造タンパク質GagがUSP8の基質タンパク質であることが初めて明らかとなった。さらに、USP8がGagを脱ユビキチン化するとGagとウイルスRNAの相互作用が弱まり、ゲノムRNAを含まないウイルス粒子が多く形成されるようになることが示唆された。これは、ウイルスRNAがウイルス粒子に動員される過程でGagのユビキチン化が重要な役割を果たしているという新規の知見であると言える。 クッシング病で見られる変異型USP8の解析では、疾患変異によるUSP8の恒常活性化のメカニズムを初めて明らかにすることができた。 このように、想定していなかった分子機構が次々と発見をされたため、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
エンドソームを介したメンブレントラフィックにおけるUSP8の役割の検討に関しては、これまでに、SNARE複合体がユビキチン化されると複合体の解離が阻害される可能性が示唆された。そこで、この可能性を確かめるためのタンパク質相互作用解析を進めるとともに、SNARE複合体のユビキチン化が膜融合反応に及ぼす影響を検討するためのin vitroエンドソーム融合アッセイ系を構築する。 レンチウイルスの出芽に関する解析では、これまでに、Gagのユビキチン化によってGagとウイルスRNAの相互作用が強まることを見出した。この現象の背景にある分子機構として、ユビキチン化したGagに結合する何らかのRNA結合タンパク質の存在が考えられた。そこで、今後はそのRNA結合タンパク質を同定し、Gagのユビキチン化・脱ユビキチン化によるウイルス形成の制御の分子機構の解明に迫る。 USP8がコラーゲンの分泌を抑制する現象については、以前、USP8の標的としてSec31を同定していた。Sec31はSec13と多量体を形成し、小胞体からゴルジへコラーゲンを運ぶ輸送小胞の被覆タンパク質である。今後は、Sec31のユビキチン化が被覆タンパク質の多量体の構造を変化させる分子機構を調べる。 クッシング病で見られる変異型USP8の解析では、今後、変異型USP8によって脱ユビキチン化されるタンパク質を同定するための手法の開発を進める。
|
Remarks |
海外ネットニュース(Cushing’s disease news):Study Sheds Light on Effects of USP8 Mutations on Disease Development. https://www.titech.ac.jp/english/news/2021/062478
|
Research Products
(12 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Molecular basis of ubiquitin-specific protease 8 autoinhibition by the WW-like domain.2021
Author(s)
Kakihara K, Asamizu K, Moritsugu K, Kubo M, Kitaguchi T, Endo A, Kidera A, Ikeguchi M, Kato A, Komada M, Fukushima T
-
Journal Title
Communications Biology
Volume: 4
Pages: 1272
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-