2022 Fiscal Year Annual Research Report
天然変性領域 (IDR) 形成を支えるスプライシング機構から俯瞰する相分離現象
Project/Area Number |
21H02476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 章男 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石垣 診祐 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 教授 (40378170)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然変性領域 / 相分離 / RNA結合タンパク / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
Bioinformatics解析による天然変性領域 (IDR)の分類を行った。Annotation databaseからヒト蛋白の全配列情報を入手し、アミノ酸の組成/電荷/疎水性情報をもとにIDR領域配列の分類を行った。6種類のクラスターへの分別に成功し、IDRを持つRNA結合タンパク (RBP)が特に集積しているクラスターを2つ発見した。これら2つのクラスターは、特にIDR領域のアミノ酸電荷に違いが認められ、一方は無電荷、他方は激しく電荷を帯びていた。これら2つのクラスターに属するRBPから数個ずつRBPを選択し、それらのリコンビナント蛋白を作製し、in vitro 相分離実験を行ったところ、無電荷IDRと有電荷IDRは、著しく分離する(混和しない)ことが判明した。 続いて、これらIDRを持つRBPの細胞内分布を高精細に観察するため、サンプルの固定法から染色・検出法に至るまで様々な条件検討を行い、超解像顕微鏡を用いた免疫染色観察系、さらには、超解像顕微鏡観察に頼らないexpansion microscopy法の確立に成功した。確立手法を用いて培養細胞やマウス・ヒト組織切片の観察を行ったところ、20種以上のRBPがRNAと一体となって径10 nm程度のfiberを形成し、それらが複雑に絡み合った径100-400nmほどのポアサイズの網目構造を核内に広げていることを発見した。 細胞実験を行ったところ、無電荷IDRを持つRBPと有電荷IDRを持つRBPは、密接に絡み合うものの混和しない網目構造を核内で広げており、その空間分布の競合を行っていた。我々の開発したtRIP法により、生体内RBP-RNA結合解析をトランスクリプトームワイドに行ったところ、この競合が、RNA結合、さらにはRNA processingの制御につながっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超解像顕微鏡実験系の構築により、RBPによる核内網目構造の同定に成功した。この構造は、全く新規の発見であるため、その検証に、別方式の超解像顕微鏡による観察や、さらには超解像顕微鏡によらないexpansion microscopy観察法など、当初予定していない観察系の構築が必要となった。様々な条件検討を行って、これら新規の観察系を立ち上げていくこととなったため、研究進捗状況が予定より遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
RBP網目構造によるRNA processing制御がどれほど汎用的な構造であるか確認するため、各種RBPの抗体染色による核内検出網目構造検出、各種RBPのtRIP解析、各種RBPのノックダウンによる機能解析を進めていく。 また、MATR3患者変異を導入した細胞実験系の確立し、RBP網目構造と病態の関係の解析を行う。 以上、研究成果を取りまとめ、速やかに論文発表を行っていく。
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