2022 Fiscal Year Annual Research Report
広塩性の扁形動物を原点に探る淡水進出における体液調節能獲得の動物界を跨ぐ新概念
Project/Area Number |
21H02520
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 竜哉 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (10294480)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 侑駿 岡山大学, 自然科学学域, 特任助教 (00837601)
坂本 浩隆 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (20363971)
関口 俊男 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (40378568)
濱田 麻友子 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (40378584)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
“プラナリア”など扁形動物は、基盤的な左右相称動物で、初めて本格的に新しい水・塩分環境に進出した。我々は、広塩性のヒラムシにおいて、抗利尿ホルモン系の祖先型を同定し、プラチトシン系と命名した。そして、抗脱水に必須であることも見出した。『抗利尿ホルモン系による“腎臓” i.e., 体液の調節』が扁形動物まで遡れた。また、プラチトシンは脳神経節の2対のニューロンのみで産生されることも発見した。この2対の細胞は、脊椎動物の2群に分化している数千の抗利尿ホルモン産生細胞(脳内で作用するもの・ホルモンを血中に放出し全身に作用するもの)に対応する原型の可能性がある。これらは前左右相称動物のゲノム等には見出せない。神経中枢化がはじまり“細胞外液”を獲得した扁形動物の神経ペプチド群は、神経シナプス系からの内分泌系/液性調節の誕生:神経内分泌~脳による生体制御系の祖先型とも考えられる。 そこで、SPring-8での3Dマイクロ-CT法により、ヒラムシの細胞レベルでのイメージングを行い、whole脳神経節を3D再構築した。前口動物(キノコ体)・後口動物(視交叉)双方の特徴をもち“原始脳”である可能性が示された。さらに、この脳神経節から、進化的に普遍的な神経ペプチドの祖先群として、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)等も発見した。現在、それらのはたらきと、1細胞/空間トランスクリプトームにより、そのニューロン回路/分子基盤を検討し、データ駆動型の発展も目論んでいる。 軟骨魚類も検討し、脊椎動物の進化における体液調節/腎臓機能の獲得を示唆している。 また、デザイン思考研究会(新学術領域「シンギュラリティ生物学」)を開催し、16大学の関連研究者で今後の展開に関して討論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先進ゲノム支援を獲得し、ヒラムシ“原始脳”の、1細胞および空間トランスクリプトームを始めた。 また、分担の准教授1名、助教2名が栄転したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒラムシの脳神経節の進化的に普遍的な神経ペプチドの祖先群のはたらきと、1細胞/空間トランスクリプトームにより、そのニューロン回路/分子基盤を検討し、データ駆動型の発展も目論んでいる。
|