2022 Fiscal Year Annual Research Report
Metapopulation genomics: integrating population dynamics and genomic using long-term data
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21H02555
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小泉 逸郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50572799)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 集団ゲノミクス / メタ個体群動態 / 統合アプローチ / 大規模長期生態研究 / サケ科魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では25年間にわたり50地点の局所個体群で得られた生態データと遺伝データを統合し、野外における小進化や、生態ー進化フィードバックの実態を解明することを目的としている。河川性サケ科魚類オショロコマの長期モニタリングが行われている15-25個体群の動態を解析したところ、温暖化の直接的な影響と競争種を介した間接的な影響が示唆された。過去25年間の温度上昇にともない、より高温に適した競争種であるアメマスが増加し、これがオショロコマ個体数に負の影響を与えていることが示唆された。一方、アメマスが少ない湧水河川においては温暖化はむしろ個体数に正の効果をもたらしていた。また集団の遺伝子頻度は時空間的に大きな変異が見られ、特に小集団においては5年ほどでも大きな時間的分化が認められた。一方で、メタ個体群スケールでは20年間でも安定性が高く、ポートフォリオ効果が示唆された。また、滝などの物理的障壁の有無や湧水と非湧水といった河川環境において、適応的な表現型変異が認められた。そこで表現型が大きく異なる10個体群200個体でゲノムを網羅的に調べたが、残留性や産卵時期など注目していた形質に関する候補遺伝子は得られなかった。中立遺伝子では集団間の分化が認められたにも関わらず候補遺伝子が検出されないのは小、集団に起因する遺伝的浮動の効果が大きいためかもしれない。今後、より極端な形質をもつ個体を数多く解析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
適応形質に関する候補遺伝子がなかなか特定できない。表現型レベルでは大きく異なるがある程度の遺伝子流動もあり、また集団サイズが小さくドリフトの影響も大きいことが原因のひとつと考えられる。加えて、個体群動態と遺伝子の動態を統合したモデルの開発も遅れている。個体群動態のデータ(地点、年度)が欠けている部分が多いためパラメータ推定が上手くいかないのが一因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
極端な形質をもつ個体を集めたり、個体数データが足りない地点で追加調査を行うなどして、統計的検出力、パラメーター推定精度を高める。また、最新の分析手法を取り入れる。
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