2021 Fiscal Year Annual Research Report
分散―競争トレードオフから迫るミジンコの種内系統地理パターンの解明
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21H02560
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 丈人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40447321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山道 真人 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員准教授 (70734804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プランクトン / 湖沼 / 進化生態 / 系統地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
分散―競争トレードオフは、多種共存のメカニズムとして注目されてきたが、歴史的な時間スケールで見れば、系統地理パターンにも影響しうる。分散能力が優位なコロナイザーと競争能力が優位なコンペティターの間には、分布域の広さ、移動分散・定着の順番、局所環境での個体数に違いが生じると予想される。日本に生息するミジンコは、絶対単為生殖性であり独立した4つの系統が存在する。これら4系統の地理的分布は大きく異なっており、分散―競争トレードオフによって説明できる可能性がある。本研究では、系統間の分散―競争トレードオフを評価したのち、種内系統地理パターンと比較する。また、それぞれの湖沼への移動分散・定着や個体数を系統間で比較する。さらに、数理モデルにより実証データの理論的な再現を確認する。これらにより、分散―競争トレードオフと種内系統地理の関係を解明する。 2021年度には、先行研究により2系統が同所的に分布することがわかっている国内5湖沼(山形県1湖沼、宮城県2湖沼、群馬県1湖沼、静岡県1湖沼)において、堆積物コア(-40cm)を採集した。採集した堆積物コアを1cm層ごとに分割して分析試料を得た。それぞれの試料について、クロロフィル+フェオ色素濃度、全リン濃度、帯磁率を測定した。また、年代測定のためのガンマ線分析を行なった。1湖沼分の試量については、堆積物からミジンコの休眠卵を分離して計数し個体群動態の評価を行なった。また、分離された休眠卵を用いて、ミトコンドリアDNAマーカーによる系統判別を開始した。研究1年目として、今後の分析に必要な試料の確保ができるとともに、種々の分析を開始することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
堆積物コアの採取、その後の分析試料の確保、種々の分析の開始が順調に進んだ。途中、年代測定のための機器が故障し修理に相当の時間を要したため繰越申請を行なったが、その後、予定通りに分析を完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた分析試料をつかって、ミジンコの休眠卵を分離して計数し個体群動態の評価を、5湖沼について進めていく。また、分離された休眠卵を用いて、ミトコンドリアDNAマーカーによる系統判別を進めていく。さらに、得られた個体群動態や移動分散・定着の順番などの結果について、環境要因との関連などを分析していく。
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