2021 Fiscal Year Annual Research Report
植物と送粉者の種特異性における化合物のブレンドとキラリティーの役割
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21H02562
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50588150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蘇 智慧 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 主任研究員 (40396221)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 種分化 / キラリティ / 種特異性 / 送粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の昆虫により花粉が運ばれる植物種が多く存在し、それらは花の匂いで送粉者を誘引する。特異的な送粉者の誘引機構の解明は、植物の種分化機構の解明につながるため、進化・化学生態学的に長く議論されてきたものの解決はされていない。ラン科の一部では新奇な化合物によっ て、特異的な送粉者を誘引する「プライベートチャンネル」が知られるが、ラン科植物以外で実際に発見された例は非常に少ない。本研究では 、種特異性を決めるメカニズムの解明を目指し、プライベートチャンネルの妥当性の検証とそれに代わる仮説(普遍的な化合物のブレンドによる特異的な送粉者の誘引機構)を提唱し、本仮説の検証を行う。仮説の検証のため、イチジク属とカンコノキ属を対象とした花の匂いの解析の後、各化合物に対する昆虫の触角電位反応、選択実験を行うことを目的として行った。本年度は、これまでに捕集を行っていたイチジク属植物を対象に、データ解析を行ったところ、同種内でも個体群ごとに花の匂いが異なること、また送粉者を用いた行動実験により花の匂いが異なる個体群の匂いには誘引されないことが明らかになった。個体群ごとの匂いの違いは、珍奇な化合物等で特徴付けられるものではなく、普遍的に植物で見られる化合物の組成比によってもたらされていた。また、コミカンソウ科のヒラミカンコノキ(Glochidion rubrum)を対象とした研究により、送粉者はいくつかの珍しくない化合物に触角の電位応答を示すこと、またそれらの化合物は授粉の影響を受けて大きく放出量が減少すること、送粉者の活動時間帯に有意に多く放出されることが明らかになった。これらのことから、植物と送粉者の種特異的な関係は、プライベートチャンネルよりも当研究で定めた仮説(ブレンド仮説)によってもたらされていることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、野外調査が困難であるが、データ解析や実験室内でできる実験などを通じて結果が出せた。本年度に稼働開始予定であったGC-EADに関しては、こちらも新型コロナウイルスの影響でドイツより購入(物品の入手)に留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、花の匂いの捕集と分析、昆虫を使った行動実験を予定通り進めていきたい。しかしながら、2022年3月よりはじまったアメリカのヘリウム輸出制限の影響を受け、最低でも半年は入手困難な状況が続くと見込まれており、花の匂いの分析とGC-EADの実施が難しいと予想される。そのため、今年度は昆虫を対象とした行動実験を主として進める予定である。
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Research Products
(1 results)