2021 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス前性の生物学的液相分離とシナプス機能の因果関係の解明
Project/Area Number |
21H02584
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
三木 崇史 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (10598577)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプスは脳機能の基盤となる素子で、シナプスの機能変化は脳の柔軟性を作り出している。シナプス機能に関わる分子群の研究は進んだが、未だに分子-機能間にはギャップがある。近年、生体分子が生物学的液-液相分離することが明らかにされてきた。そこで、シナプス伝達に関わる分子の液相分離状態を観察し解析することで、分子-機能間ギャップを埋めることを研究目的とした。 本年度は、シナプス前部にあるシナプス小胞の液相分離に着目し、シナプス機能との関連を解析した。シナプス小胞を蛍光ラベルし、単粒子解析により1シナプス小胞の動きを観察する系を確立した。確率モデルをもちいてシナプス小胞の軌跡を解析したところ、シナプス小胞の動きには速い拡散と遅い拡散の2状態存在することが分かった。この速い拡散と遅い拡散はある一定の確率で遷移することから、シナプス小胞の液相分離状態を表している可能性が推測された。この2状態はアクチン重合阻害剤により消失し速い拡散の1状態にシフトしたことから、アクチンフィラメントがシナプス小胞の遅い拡散を作り出すことが示唆された。また、この遅い拡散が消失すると、神経活動中のシナプス小胞の膜近傍への高速動員が抑制され、持続的な伝達物質放出が維持できなくなることが分かった。以上の結果から、シナプス前終末内のアクチンはシナプス小胞の動きを制御することで、神経活動時に効率的にシナプス小胞を膜近傍へ動員し、高頻度で持続的なシナプス伝達を実現している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の達成に必須な、シナプス前終末の分子群の液相分離状態を1分子動態観察から検出する手法を確立することができたため。また、本研究課題に関連してシナプス機能の異なる2つのシナプス伝達メカニズムを明らかにし、論文2報を発表することができたため(Tanaka, Sakaba, Miki#, J. Physiol. 2021、Van#, Miki#, Marty, PNAS 2022、#:責任著者)。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、シナプス小胞のナノ動態解析を行い、シナプス小胞液相分離の分子メカニズムについて解明し、研究論文としてまとめる。次に、エキソサイトーシスに関わる分子群(カルシウムチャネルなど)に着目し、この分子動態を観察する手法を確立し、シナプス小胞と同様に液相分離メカニズムについて研究を進める。
|