2021 Fiscal Year Annual Research Report
Neural basis of memory acquisition and retrieval
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21H02597
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 直毅 九州大学, 理学研究院, 教授 (10508956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺前 順之介 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50384722)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の脳領域のひとつである海馬は、出来事や意味などの記憶学習に必須の役割を果たし、記憶の“獲得”時でも“想起”時でも活性化する。記憶の想起は獲得時の神経活動の“再生”であると一般的に考えられているが、実際に細胞レベルで解析を行うと、想起時に再活動する細胞の割合は意外と少ない。さらに、記憶の獲得には外部感覚情報の入力が必要であるのに対し、想起は必ずしも必要としないことからも、記憶の獲得と想起の際では異なる神経回路・機序も働いていると考えられるが、ほとんど明らかにされていない。 そこで本研究では、記憶の“獲得”と“想起”で個別に機能するマウス海馬周辺領域の神経回路を網羅的に同定、両者の違いを明らかにすることを目的としている。ここでは、背側海馬依存的であることが知られている文脈依存的な恐怖条件付け課題における、文脈依存的な恐怖記憶の獲得と、その想起についての解析を行った。文脈依存的恐怖条件付けでは、マウスを条件付け箱に入れて弱い電気ショックを与えることにより、電気ショックという恐怖を誘導する出来事と、それが生じた条件付け箱という特定の環境・文脈を連合した学習が生じる(記憶の獲得)。再びマウスを同じ条件付け箱に戻すと、電気ショックを与えないにも関わらず、マウスは恐怖記憶を想起して、恐怖反応行動の一つであるフリージングを示す。 まず脳定位装置を用いて、マウスの背側海馬CA1領域に緑色蛍光タンパク質EGFPを発現する逆行性のアデノ随伴ウイルス溶液をインジェクションした。このAAVはCA1領域に投射する神経細胞の軸索末端に感染し、軸索を介して逆行性に輸送され、細胞体においてEGFPを発現する。その後、恐怖条件付けや記憶想起を行う群に分け、抗GFP抗体と抗c-Fos抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、網羅的に蛍光シグナルの観察と撮影を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に大きな問題も無く、予定通りに研究が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、行動課題の違いによる各群間でのc-Fos陽性細胞の割合の差が認められた脳領域に特に着目して、更なる解析を行う予定である。具体的には、これらの脳領域と背側海馬CA1領域をつなぐ神経回路に選択的なChR2やArchTなどの光感受性タンパク質の発現を誘導し、光遺伝学による特定の神経回路の役割の違いを行動レベルで明らかにする。
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