2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21H02622
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 由起子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (80610683)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)の特徴的な病理学的所見は、それぞれAβとタウから構成される2種類のアミロイド蓄積である。これらのアミロイドの形成と蓄積がAD発症の原因であると考えられていることから、Aβおよびタウの凝集抑制あるいはそのクリアランス促進がADの根本的治療に繋がると考えられている。そこでAD治療を目指して、これまでにアミロイドに対して光酸素化触媒と光刺激による人工的な酸素原子付加を検討してきたところ、酸素化AβはAβ凝集阻害能をもち、脳内においてはクリアランスされやすい可能性を見出した。本研究ではその可能性の検証とメカニズムを明らかにすることを目的としている。 本年度はタウに着目し、Aβで見られたような酸素化によるクリアランス促進がタウでも起こるかどうかを検証した。Aβと異なり細胞内に蓄積するタウを酸素化するために、細胞膜透過性を有する新しい光酸素化触媒を開発した。この新規触媒を用いて、昨年度に開発した非侵襲的光酸素化方法によってタウトランスジェニックマウスに対して反応を行ったところ、脳内タウアミロイドへの酸素化に成功した。また、免疫組織化学的解析から、酸素化により脳内タウアミロイド量が減少することも明らかにした。今後、そのクリアランス機構について、Aβと同一か異なるかという点も含めて解析していきたい。 また、酸素化される残基であるヒスチジンに着目した検討も行った。ヒスチジンを一つしかもたないアミロイドタンパク質であるα-シヌクレインに着目し、アラニンに置換した変異体を作製した。この変異体を用いて、酸素化の有無、凝集抑制効果に対する影響を検証したところ、ヒスチジン変異体において、期待通り酸素化が減少すること、凝集抑制効果が減少することを明らかにした。この結果は、酸素化効果発揮におけるヒスチジン残基酸素化の意義を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素化Aβの分解亢進に加え、タウにおいても酸素化でクリアランス亢進が観察され、酸素化の効果に汎用性があることが示された。この結果は様々な神経変性疾患治療法への適用の可能性を示唆している。また細胞外に蓄積するAβと細胞内に蓄積するタウが、同じように酸素化によってクリアランスが促進されるということは面白く、今後メカニズム解析をする上で、良い基盤となるデータが得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素化によるクリアランス亢進メカニズムを検証するために、まずは酸素化Aβや酸素化タウの分解酵素の探索・同定を目指したい。現時点ではリソソーム分解酵素の関与を考えているため、薬理学的検討などにより、その性質を絞り込んでいく。 またヒスチジン残基に着目した実験としては、α-シヌクレインのみならず、Aβでも同様に凝集抑制効果におけるヒスチジン酸素化の意義を検討したい。さらに、クリアランス促進効果におけるヒスチジンの意義についても検討していきたい。
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