2023 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism underlying organelle trafficking regulated by stractually diverse proton pump vacolar ATPase
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21H02627
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
中西 真弓 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (20270506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
關谷 瑞樹 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (70509033)
後藤 奈緒美 (松元奈緒美) 国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 助教 (80403971)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロトンポンプ / 液胞型ATPase / オルガネラ輸送 / 分泌リソソーム / インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロトンポンプV-ATPaseの構造的多様性により制御されるオルガネラ輸送の原理の解明を目指し、骨代謝、血糖値調節、神経細胞の情報伝達、歯牙形成などにおいて特徴的なオルガネラ輸送を取り上げ、V-ATPaseのaイソフォームが果たす役割を解明する。 我々は、骨吸収を担う破骨細胞の分泌リソソームのa3イソフォームが、リソソームの輸送調節因子であるRab7やその活性化因子であるMon1-Ccz1と複合体を形成し、これらの因子を分泌リソソームにリクルートすることを示した。令和5年度は、a3とMon1-Ccz1の結合を解析し、各々の結合部位を同定した。また、結合状態を詳細に解明する目的で、構造解析を目指し結合部位のリコンビナントタンパク質の発現・精製を進めている。 インスリン顆粒は、グルコース刺激により細胞膜へ向かって移動し、刺激が解除されると細胞の内側に向かって移動する。我々はこれまでに、a2が内向き輸送に必須であること、インスリン顆粒の輸送調節因子であるRab27、および、その活性化因子とも結合することを示した。令和5年度は、a2の発現を抑制して内向き輸送を阻害すると、インスリンの分泌量が上昇することを見出した。a2が関与する内向き輸送は、インスリン分泌の調節に重要であると考えられる。また、a3は、グルコース濃度が上昇する際のインスリン顆粒の外向き輸送に関与することを示した。 またこれまでに、歯牙を形成するエナメル芽細胞におけるODAM分泌にa3が関与することを示した。令和5年度は、Rab27が分泌リソソームに局在するためにa3が必須であることを明らかにした。この知見は、エナメル芽細胞におけるODAM分泌の分子機構の解明につながる。以上のように各オルガネラ輸送の分子機構を解明することにより、V-ATPaseが制御するオルガネラ輸送の共通原理の解明に近づいている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、骨代謝、血糖値調節、神経細胞の情報伝達など重要な生命現象における特徴的オルガネラ輸送を取り上げ、V-ATPaseのaイソフォームに注目して分子機構を解明する。さらに、解明した各分子機構を俯瞰して、オルガネラ輸送の共通原理に到達することを目指している。 破骨細胞における分泌リソソームやインスリン分泌におけるV-ATPaseの役割と分子機構は順調に解明しつつあり、その成果を論文や学会で報告している。神経細胞の分泌小胞の軸索輸送に関する研究は遅れ気味であるが、一方で、新たに立ち上げた共同研究により、エナメル芽細胞のODAM分泌におけるV-ATPaseの役割を明らかにしつつある。これは本研究開始時には想定していなかった成果である。そこで、全体としておおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトンポンプV-ATPaseに注目して、破骨細胞における分泌リソソーム、膵β細胞におけるインスリン分泌、神経細胞における分泌小胞輸送、およびエナメル芽細胞におけるリソソーム輸送の分子機構の解析を進める。 1、破骨細胞の分泌リソソームの輸送に関わるV-ATPaseのa3イソフォームとMon1-Ccz1の結合様式を解析する。分泌リソソームに局在するa3イソフォームは、小胞輸送調節因子であるRab7やその活性化因子であるMon1-Ccz1と複合体を形成する。今後は、この結合について詳細な情報を得るため、結合部位をリコンビナントタンパク質として発現・精製し、結晶構造解析やクライオ電顕による立体構造の解明に取り組む。 2、膵β細胞のインスリン顆粒は、グルコース刺激により細胞膜へ向かって移動し、刺激が解除されると細胞の内側に向かって逆向きに移動する。これまでに、V-ATPaseのa2イソフォームが、この内向き輸送に必要であること、a2をノックダウンすると刺激解除後もインスリン分泌が抑制できないこと、また、インスリン顆粒の輸送調節因子であるRab27と結合することを見出した。さらに、a3をノックダウンするとグルコース刺激後の外向き輸送が抑制されることも見出した。今後は、a3が関与する内向き輸送の分子機構を解明する。 3、これまでに、エナメル芽細胞の分泌リソソームによるODAMの分泌に、Rab27とともにa3が関与することを示した。今後は、a3KO培養細胞などを用いて、Rab27の局在に対するa3の影響などを検討し、ODAM分泌の分子メカニズムの解明を目指す。 4、神経細胞における分泌顆粒の軸索輸送にRab27が関与することが示唆された。今後は、分泌顆粒に局在するaイソフォームを同定し、神経由来の培養細胞を用いて、軸索輸送におけるV-ATPaseの役割を解析する。
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Research Products
(5 results)