2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規リン脂質定量法を用いた動脈硬化性疾患のリバーストランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
21H02642
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
森田 真也 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20449870)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉森 大助 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (40272695)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | リン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
両親媒性化合物であるリン脂質は、低密度リポタンパク(LDL)や高密度リポタンパク(HDL)などリポタンパク粒子の表面膜を構成しており、動脈内膜マクロファージが変性リポタンパク粒子を過剰に取り込むことで開始する動脈硬化の進行において重要な働きをしていることが予想される。研究代表者は、これまでに、主要リン脂質クラスに対する高感度・高精度かつハイスループットな酵素蛍光定量法を開発し、様々な研究に応用してきている。本研究では、その定量法を利用し、各リン脂質クラスが動脈硬化性疾患の原因やバイオマーカーとなるか検討する。まず、リン脂質クラス酵素蛍光法について、ヒト血漿から分離したHDL・LDL・超低密度リポタンパク(VLDL)において、主なリン脂質クラスであるホスファチジルコリン(PC)・ホスファチジルエタノールアミン(PE)・スフィンゴミエリン(SM)の定量妥当性を検証した。そして、ヒト血漿から分離した各リポタンパク中のPC・PE・SMの組成比について酵素蛍光定量法で求めた結果、SM/PC比はVLDLと比べてLDLにおいて著しく高くなり、HDLではVLDLとLDLの中間の値となることが示された。一方、PE/PC比に関しては、VLDLからLDLになることで大きく低下し、HDLではその中間であった。このように、リン脂質クラス組成が各リポタンパクで大きく異なることが示され、リポタンパク粒子表面のリン脂質クラス組成変化は各種アポリポタンパクの結合やリパーゼの活性に影響してくることが推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず各リン脂質クラス酵素蛍光定量法を、血中濃度測定に応用できるようにすることを目標としている。ヒト血漿から分離した各種リポタンパクに含まれる主なリン脂質クラスの定量について、酵素蛍光法の定量妥当性を検証し、さらに各リポタンパク(HDL・LDL・VLDL)で大きく異なることが明らかとなった。これまでの従来法では測定が困難であったため、各リポタンパク中のリン脂質クラスの役割はほとんど知られていなかったが、本定量法によりリポタンパク中リン脂質クラス組成と動脈硬化性疾患との関わりを明らかにすることが期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、各種リポタンパクに含まれる他のリン脂質クラスの定量を可能にしていき、それらのリポタンパク代謝や細胞活動に与える影響について検討する。さらに、リポタンパクや細胞膜のリン脂質クラスと動脈硬化性疾患との関係を調べる。
|
Research Products
(6 results)