2021 Fiscal Year Annual Research Report
線溶系制御因子を標的とした新規複合的がん免疫療法の確立
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21H02767
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 教授 (10398753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 卓 東北大学, 大学病院, 講師 (50396496)
アブドゥル アジズ 東海大学, 医学部, 特任講師 (50738789)
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プラスミノーゲン活性化阻害因子(PAI-1) / 免疫チェックポイント / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミノーゲン活性化阻害因子(PAI-1)は、その線溶系阻害活性からがん細胞の浸潤や転移を抑制するはずであるが、実際はPAI-1を高発現するがんの悪性度は非常に高い。これは『PAI-1パラドックス』と呼ばれ、多くのがんに共通する悪性化の重大要因であるにも関わらず、その機序は不明のままである。申請者らは、PAI-1が免疫チェックポイント分子(PD-L1)の発現を誘導し、がん細胞を免疫監視から逃避させることがPAI-1パラドックスの本態である可能性を見出した。 今年度はPAI-1によるPD-L1発現制御の分子的機序の解明に取り組んだ。細胞外体液中で線溶系阻害因子として機能するPAI-1であるが、細胞が受容体を介して刺激を受ける場合がある。PAI-1は、細胞膜上のLRP1に結合すると同時に、uPAとその受容体(uPAR)との複合体にも結合し、4量体を形成してシグナルを伝達する。そこで、LRP-1やuPARの欠損株を作製、または、LRP1との結合部位やuPA受容体との結合部位に変異のあるPAI-1を用いて検討を行ったところ、PAI-1によるPD-L1発現誘導はキャンセルされたことから、PD-L1発現誘導はPAI-1による直接的な作用であることを明確にした。さらに、シグナル伝達経路についても解析を行い、PAI-1がJAK/STAT経路を活性化し、JAK/STAT阻害剤の添加により発現誘導がキャンセルされることから、PAI-1はLRP-1/uPARに結合し、JAK/STAT経路依存的にPD-L1の発現を誘導していることをあきらかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りにPAI-1による免疫チェックポイント分子の発現制御の分子メカニズムを明らかにすることができた。PAI-1阻害剤の抗腫瘍効果についても検討する予定であり、概ね順調に進展しているが一部まだ検討しきれていない項目があるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進に関して特に障害となる事態は発生しておらず、今後も継続して研究を進めていきたい。
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