2021 Fiscal Year Annual Research Report
欲求に応じて行動を調節する神経回路の解明:モデル動物を用いた研究
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21H02797
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 洋 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70453115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 欲求 / 報酬 / 意欲 / 脳 / 空腹 / 喉の乾き |
Outline of Annual Research Achievements |
判断と意志決定は人間の社会生活の根幹であり、その異常は、肥満、薬物依存症、うつ病などの障害として現れる。先行研究により、ヒトの前頭葉内側部の異常がうつ病と関わることが知られている。更に、マカクザルのこの脳部位を磁気刺激すると、うつ様行動が発現する可能性が指摘されており、そのメカニズムを理解するための研究を進める。 本年度は4年計画の計画1年目として、過去の実験で確立した次の2つの実験技術を再確認すると伴に、新たな実験の予備的検討を行った。具体的な内容は次の通りである。 1) 喉の渇き・空腹の評価(生理指標):馴化訓練を行った覚醒中の個体の伏在静脈から、翼状針を用いて約1.5mlの血液を採取する。採血後、遠心分離により血清を回収し、自動浸透圧計を用いて血清の浸透圧濃度を測定する。更に、空腹の指標であるグレリンをELISAを用いて測定する予備的検討を行った。 2) 欲求の程度に応じて変化する行動の評価(行動指標):ミクロ経済学の数理モデルを用いて、各個体が主観的に感じる報酬の価値を行動から推定する。具体的には、サルに価値判断課題*を行わせることで、サルが主観的に感じる液体報酬の価値を推定する(ヒトと同様にサルが主観的に感じる価値は頭打ちとなり、客観値より目減する)。
このように、計画1年目に客観的な指標に基づく欲求の測定に関して十分な進展を得たため、来年度に実験成果を確定させるための本データを取得する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、4年計画の一年目として、計画に従って喉の乾きの測定の再現を実施した。これに加え、空腹の客観的な指標を確立するための予備的検討を開始し、うまく行きそうな感触を得た。このことにより、この指標2つを確立する目処が立ち、その指標を用いて欲求の程度に応じた脳活動の測定が可能となる目処が立った。 従って、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、一年目の研究の進展を踏まえて研究対象を拡大させる。この目的のために、新たな実験の予備的検討を開始する。具体的な内容は次の通りである。 予備的実験検討 1)ヒトの欲求と意欲の調節に関わるコストの測定法の開発:ヒトの行動は、喉の乾きや空腹のみならず、様々な認知過程に影響される。その中でも、負担の程度(コスト)は、うつ病などの行動の異常に関わると考えられる主要な要因の一つである。そこで、ヒトを対象に、個人の感じるコストを測定する方法の開発を検討する。 2)げっ歯類を用いた生理的な欲求の検討:生理的な欲求の調節は、脳幹などの生命の維持に関わる神経回路の機能と密接な関連を持つが、サルを対象としてこの神経回路を調べるのは容易ではない。そこで、サルを用いた際のアプローチを検討するために、げっ歯類を対象として脳幹・延髄の神経回路が欲求の調節に関わる仕組みを検討するための、予備的な実験を開始する。 以上のように、一年目の研究の進展を受けて、メインのサル実験に加えて新たな予備的検討を実施することで、本研究の格段の進展を狙う。
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