2021 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌が調節するアミノ酸キラリティによる宿主エネルギー代謝機構の解明
Project/Area Number |
21H02982
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笹部 潤平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10398612)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / エネルギー代謝 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では哺乳類のエネルギー代謝において、共生細菌に由来するD-アミノ酸が有する生理的な役割・病態生理や疾患制御における意義を解明することが目的である。 研究期間中に、全身・臓器特異的D-アミノ酸代謝異常マウスを用いて、そのエネルギー代謝異常関連の表現型の有無を調べるとともに、その分子機構を明らかにする。 本年度は、全身D-アミノ酸代謝異常マウスにおける表現型を確認するとともに、内因性・外因性D-アミノ酸代謝異常マウスを作成した。全身D-アミノ酸代謝異常マウスでは、通常加齢および高脂肪食負荷のいずれにおいても肥満を認めた。脂肪組織は、CT上では皮下および内臓のいずれもD-アミノ酸代謝異常により増加していた。また、D-アミノ酸代謝異常マウスでは、糖代謝異常を認めたが、食事内容によってその変化の内容は異なっていた。さらに、抗菌薬投与によってD-アミノ酸代謝異常により誘導される肥満は有意に抑制されたことから、外因性(特に細菌由来)D-アミノ酸の代謝が哺乳類のエネルギー代謝と関連があると考えられた。一方で、内因性D-アミノ酸代謝異常マウスでは、肥満を含めた体格の異常は認めなかった。 これらのことから、細菌由来D-アミノ酸の代謝が、哺乳類宿主のエネルギー代謝・糖代謝に影響を及ぼすことが判明した。これまで、L-アミノ酸がエネルギー代謝において中心的な役割を果たすと考えられてきたが、光学異性体のD-アミノ酸もエネルギー代謝調節に寄与している可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、腸内細菌に由来するD-アミノ酸の全身代謝異常と哺乳類のエネルギー代謝を関連づけるin vivoの研究成果を得ることができた。本年度の目標は、in vivoにおけるD-アミノ酸代謝異常症の表現型の確認であったため、研究は概ね順調に進展しているものと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、臓器特異的なD-アミノ酸代謝異常マウスにおける表現型の確認をすることで、宿主のエネルギー代謝と関連する臓器を同定する。さらに、D-アミノ酸代謝異常が肥満を引き起こす分子機構を明らかにする。in vivoでD-アミノ酸代謝異常が引き起こす、エネルギー摂取・消費の変化、それらを調節する内分泌系・自律神経系の活動の変化を包括的に評価する。さらに標的代謝系が明らかになれば、in vitroの実験系でその分子機構を明らかにする。
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