2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of anti-scirrhous stomach cancer produced by the deep-sea actinomyces
Project/Area Number |
21H03007
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
坪内 泰志 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30442990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁木 満美子 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20438229)
福田 隆志 近畿大学, 農学部, 教授 (30348586)
八代 正和 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60305638)
瀬良 知央 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 学外研究員 (80897372)
金子 幸弘 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90469958)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キルス胃癌 / 深海性放線菌 / 天然物化学 / ゲノム解析 / 精製・構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度では研究課題対象である抗スキルス胃癌活性を呈する深海・海洋性放線菌32株のうち4株に対して、活性物質の精製法確立および、生産菌ゲノム解析を行なった。評価した3株のうち、非タンパク質性の活性化合物を生産するものが1株、ペプチド性の活性化合物を生産するものが3株と見積もられた。非タンパク質性の活性候補分子は常法に従い、酢酸エチルを用いた液液分画、液液分画後の濃縮サンプルを用いたC18固相抽出、C18系Preparative HPLCシステムを用い、ほぼ単一ピークになるまで精製するに至った。ペプチド性の活性化合物は硫酸アンモニウム濃縮、親水性クロマトグラフィーの一種であるHILIC系Preparative HPLCシステムを用い、精製を進めた。活性評価には弊学附属病院で樹立した培養細胞(正常線維芽細胞及びスキルス胃癌細胞株7株のうち4株)を用い、精製各段階での活性の追跡、および比活性算出に用いた。同活性化合物群を対象とするOrbitrap-MSを用いた精密質量分析では、非タンパク質性の活性候補分子のm/zが778.1254、ペプチド性の活性化合物はm/zが250~650の範囲内に収まることから、分析対象とする4活性化合物は低中分子化合物であることが明らかとなった。生産菌ゲノム解析では、long read dataにはONT社MinIONシステム、short read dataにはIllumina社NovaSeq、ないしはMGI社 のDNBSEQ T7を遂行し、2プラットフォームによるhybrid assembleを採用した。得られた各データからopen source codeによるバイオインフォマティクス手法でwhole genome配列を構築することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【活性物質特性解析】においては抗スキルス胃癌活性候補物質の多様性を求めるため、昨年度同様に抗スキルス胃癌活性物質の精製・構造解析を中心に研究を進めている。同活性が認められた深海・海洋性放線菌32株から活性強度を基準として順次分析を進めており、昨年度分と併せて現状で生産菌11株からの抗スキルス胃癌活性物質精製条件を確定するに至った。同活性物質の構造解析には端緒についたばかりであるが、Orbitrap-MSを用いた精密質量分析データは既に得ている。また、ペプチド性の抗スキルス胃癌活性物質については特性解析の一端としてペプチド一次配列を決定するためのフィンガープリントアッセイを計画している。 【微生物学的解析】においてはNGSを用いた生産菌ゲノム配列解析を進めており、現状では昨年度分と併せて計14株の完全長ゲノム配列の決定に至った。またそのうち6株に関しては資化性や形態学的観察を主とする表現型識別による分類、細胞壁構成アミノ酸や細胞内脂肪酸組成、キノン同定による化学的分類、16S rRNA遺伝子やハウスキーピング遺伝子を対象とする分子遺伝学的分類の実施による生産菌株の特性解析を終えており、微生物株としての新規性を確認した。また本年度に決定した4株分のゲノム配列はそのゲノムサイズが7Gb~11Gbと幅広く、コードされている16S rRNA遺伝子を指標とした分析からはいずれも新種株に相当することが見出された。解析したゲノム配列は公共データベースであるDDBJに登録申請済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
【活性物質特性解析】においては、まだ手掛けていない深海・海洋性放線菌株に由来する抗スキルス胃癌活性物質の精製・構造解析を中心に研究を展開する。詳細な構造データを取得するため、一次元・二次元NMRやFT-IRを用いて活性物質の分子団配置を同定する。また創薬シーズとしては活性の作用機序を明白にすることが重要である。そのため、活性候補分子をアナライトとした分子間相互作用を採用し、そのリガンド探索を行うことでシグナル伝達の初発作用因子推定を行う。 【微生物学的解析】においては、未着手である抗スキルス胃癌活性化合物生産菌のゲノム配列解析完了を目指すと同時に、優先順位の高い株(4-5株程度を想定)のトランスクリプトーム解析を進め、代謝生合成経路の同定を目指す。この代謝生合成関連構造遺伝子クラスター情報を用いて、遺伝子工学的手法に基づく分泌型発現系の構築を進める。 【基礎病理学的解析】においては、培養細胞評価系で有意と判断した抗スキルス胃癌活性化合物に対して、活性候補分子を処理/未処理した培養細胞の遺伝子発現解析データを取得し、トランスクリプトーム解析による差分遺伝子発現量を精査することで同データをもとにした遺伝子発現ネットワークを構築する。その際、予備試験として段階希釈した精製抗スキルス胃癌活性化合物で処理した培養細胞株に対しMTT assayあるいはCCK assayを行い、事前に実効濃度を見積もる。現在スキルス胃癌腹膜播種マウスを作成段階にあるが、培養細胞での遺伝子発現解析と同時に、同モデルマウス用いた動物実験評価系に展開する予定である。
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