2022 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門の破綻に着目した術後神経認知機能障害の発症機序解明
Project/Area Number |
21H03025
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志田 恭子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)
加藤 大輔 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (10712292)
小山内 実 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90286419)
大澤 匡弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (80369173)
打田 佑人 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (20834261)
仙頭 佳起 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80527416)
上村 友二 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80791144)
中西 俊之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80857243)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 術後神経認知機能障害 / 血液脳関門 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に確立した術後認知機能障害(NCD)モデルが、記憶のどの段階で障害を起こしているのか、新規物体認識試験(NOR)のtrainingとtestの間の時間を変えることで、短期記憶障害の確認をした。通常、NORではtrainingとtestの間は24時間空けるが、15分間に変えて、海馬を主体とした「記銘」の異常を確認できる。その結果、15分間にした場合は、認知機能の低下を認めず、短期記憶障害がないことが分かった。つまり、術後NCDモデルは、記銘の障害はなく、その後の記憶の保持・想起の段階に異常があることが判明した。 血液脳関門(BBB)の破綻の部位と時間の検討を行うため、昨年度に引き続き、10kDaデキストランとトマトレクチンを同時に眼窩注することで血液と血管壁の染色をし、血管外への漏出がないか解析したが、デキストランの血管外への漏出を数値化することが困難だった。このため、色素を投与したマウスの脳組織の上清の蛍光輝度の測定に変更した。デキストランは眼窩注の確実性が低いため、フルオレセインの腹腔内投与に変更した。各種プロトコルを試行錯誤し、LPSモデルのBBBの破綻を、最終的にフルオレセインナトリウムの腹腔内投与で測定できるプロトコルを確立した。 蛍光輝度の測定と並行して、2光子顕微鏡を用いて、術後NCDモデルのBBBの破綻の観察を行った。最初はフルオレセインの投与で観察を行っていたが、色素の追加投与の際に、残存色素があることから、投与後6時間で残存色素がなくなり、追加投与が可能なフルオレセインナトリウムに変更した。予備実験の22週齢の術後NCDモデルで、術後の血管外の色素の輝度値の上昇を認め、これがBBBの破綻であるか精査中である。 また、この後に予定しているqAIM-MRI法や脳波の測定については、BBBの破綻部位と時間が判明次第、速やかに実施できるように準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BBBの破綻の部位と時間の検討に時間を要している。昨年度、主に実施していたデキストランとトマトレクチンの染色では、毛細血管の破綻を解析することが難しかった。また、脳組織の蛍光輝度の測定でも、フルオレセインのpH依存性の輝度の変化が判明するのに時間がかかり、適切なプロトコルでの実施が遅れた。また2光子顕微鏡でも、追加投与が可能な色素(フルオレセインナトリウム)にたどり着くまでに時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 術後NCDモデルのBBBの破綻の確認:現在検討中の2光子顕微鏡での観察で、無処置のマウスと、麻酔のみ実施するマウスで、同様に撮影した際の血管外の輝度値の変化を確認する。22週齢の術後NCDモデルの結果と、これらの結果を総合して、術後のBBBの破綻が測定できているか確認する。確認ができたら、14-15週齢のマウスで、術後NCDモデルを作成し、撮影・解析を行う。 また、2光子顕微鏡での結果が出たら、術後NCDモデルの2光子顕微鏡と同時刻の脳組織のフルオレセインナトリウムの蛍光輝度の測定を行う予定である。さらに、2光子顕微鏡を用い、透明化処理した全脳を観察することで漏出部位の空間的情報を取得する。BBBの破綻部位の神経活動の確認のため、①活動依存性マンガン造影MRI(qAIM-MRI)法、②高密度多点電極による多数の脳領域からの脳波測定、を実施する。 2) BBBの破綻の発生機序の解明:ミクログリアの関与の検討のため、1)と同様に2光子顕微鏡で、円形開頭術後に麻酔・手術を実施し、前後7日間の経時的な血管とミクログリアの動態観察を行い、BBBの破綻とミクログリアの血管周囲への集積と活性化を評価する。その後、新規物体認識試験で認知機能を調べ、BBBの破綻およびミクログリアの血管周囲への集積と活性化と「術後NCD」との相関を評価する。 3)臨床研究:基礎研究でBBB破綻が確認できたら、予定している検討を開始する。
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