2023 Fiscal Year Annual Research Report
Therapeutic applications by using long non-coding RNA-mediated gene expression regulation
Project/Area Number |
21H03034
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
関亦 正幸 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80250190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関亦 明子 福島県立医科大学, 看護学部, 教授 (50321823)
伊関 憲 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70332921)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 長鎖非コードRNA / インターロイキン9 / 炎症 / アレルギー / 肺疾患 / エピジェネティクス / サイレンサー / クロマチン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症などの全身性炎症反応症候群は、過剰なサイトカイン産生で重症化する致死性の高い疾患である。しかし、どのような機構で免疫系が過剰な反応を示し、大量のサイトカインを一気に放出するのか詳細についてはよく分かっていない。以上の理由から、サイトカインの過剰発現を抑制するための有効な治療法が確立していないのが現状である。本研究では、サイトカイン産生を適正に保つために、タンパク質の遺伝情報を持たない長鎖非コードRNA(lncRNA:long noncoding RNA)に着目し、このlncRNAによる遺伝子発現調節機能を利用した新たな炎症制御法の創成を目指している。そこで、炎症性肺疾患の重症化の原因サイトカインの一つであるインターロイキン9(IL-9)に着目した。申請者らはこれまでの研究で、IL-9遺伝子の下流6 kbの非コード染色体DNA領域にサイレンサーを同定し、このサイレンサーはIL-9遺伝子プロモーターに作用して転写を抑制できることを見出した。しかも、このサイレンサーからはタンパク質情報をコードしないlncRNAが転写されていることを、世界に先駆け突き止めた。IL-9遺伝子本体から遠位にあるIL-9サイレンサーが持つ転写抑制機能を、このlncRNAが担っている可能性が示唆された。そこでlncRNAの実体を解明するため、ゲノムDNA上のどの領域からlncRNA が転写されるのか正確な転写開始点と転写終結点を決定した。更に、このlncRNAに結合するタンパク質を網羅的に同定し、lncRNA複合体によるIL-9転写抑制のメカニズムの解明を進めた。さらに、lncRNAを欠損したマウスをゲノム編集技術で作製し、免疫制御におけるlncRNAの機能解明を進めている。以上の結果をもとに、現在、lncRNAによるIL-9遺伝子発現調節機能を利用した新たな炎症制御法の創成を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近同定されたタイプ9T細胞(Th9)はIL-9を過剰に産生することで炎症性肺疾患の重篤化に関わっている。これまでにIL-9の転写量をRT-PCR法で解析したところ、Th1(タイプ1)細胞において強いIL-9の転写抑制が認められた。おそらく、この転写抑制されているTh1細胞において、IL-9サイレンサーが機能していると推測された。そこで、このサイレンサー領域から転写されるlncRNAの転写開始点と終結点をRACE法で解析したところ、全長約500 bpの2つのlncRNAがセンス・アンチセンスの両鎖から互いにhead-headで転写されていることが判明した。これら2つのlncRNAはイントロンを含んでいなかった。さらに、これらのlncRNAに結合するタンパク質をLC-MS/MSの質量分析法で解析したところ、転写抑制に関係する一連のRNA結合タンパク質(未発表)が同定できた。次に、IL-9サイレンサーを欠損したゲノム編集マウスを作製し解析したところ、この欠損マウスではIL-9の発現上昇が観察された。さらに、このIL-9サイレンサー欠損マウスと卵白アルブミンOVA抗原特異的TCRを導入したトランスジェニックマウス(OT-II)とを交配し、OVA抗原特異的な炎症誘導実験が可能なOT-II/IL-9サイレンサー欠損マウスを作製して肺炎症誘導実験を行った。このOT-II/IL-9サイレンサー欠損マウスから調製したナイーブヘルパーT細胞を、免疫系を持たないRag2欠損マウスに移植後OVA抗原を噴霧吸引させて肺炎症を誘導させたところ、野生型マウス(OT-II)に対してIL-9サイレンサー欠損T細胞移植マウスの肺では重篤な好酸球の浸潤による強いアレルギー症状が観察された。以上の解析から、IL-9サイレンサーから転写されるlncRNAは、タンパク質と結合した複合体としてIL-9の転写を制御することで好酸球依存性の重篤な肺アレルギーの抑制に関与していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析で、IL-9サイレンサーから転写されるlncRNAの実体が徐々に明らかになってきた。すなわち、lncRNAは特異的結合タンパク質と複合体を形成し、転写抑制に関与していることが判明した。さらに、lncRNAを含むIL-9サイレンサー領域欠損マウスを用いた解析でも、IL-9サイレンサーはIL-9の転写抑制に関与していることがマウス個体レベルでも判明した。今後は、lncRNA結合タンパク質の欠損マウスを用いて炎症制御における機能の解明を進める。そのため、抗原特異的に炎症誘導できる肺炎誘導実験や肺炎球菌による感染実験を実施して、炎症制御におけるlncRNA複合体の実体解明をマウス個体レベルで進める。次に、IL-9サイレンサー内に存在すると思われるIL-9サイレンサー特異的なプロモーターを決定する。この同定したプロモーターを組み込んだルシフェラーゼ活性をレポーターとして用いる転写活性測定用のレポーターベクターに組み込んで、各Thサブセット細胞を用いたトランスフェクション測定を行うことで、どの領域に転写活性開始点であるプロモーター活性化あるか決定する。これにより、lncRNAの転写がそのように制御されているか解明する。更に、本lncRNAを過剰発現したレポーター細胞株を用いて、lncRNAの活性を増強、または、抑制する低分子化合物の創薬ライブラリーからのスクリーニングを進める。これにより、得られる化合物を活用した新たな炎症制御法の創成を目指す。
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Research Products
(1 results)