2024 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現シグネチャーによる頭頸部癌局所リンパ構造の免疫・ニッチ機構の解明
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23K21477
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
脇坂 尚宏 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70377414)
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2024-04-01 – 2026-03-31
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| Keywords | 頭頸部癌 / 遺伝子発現シグネチャー / ヒト乳頭腫ウイルス / 免疫 / ニッチ / リンパ節転移 |
| Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、摘出中咽頭癌標本を腫瘍部分と扁桃部分に分離してマイクロアレイ法によるmRNAの解析を行った。13症例1)原発巣周囲の扁桃組織、2)転移を伴わない所属リンパ節、3)炎症性扁桃について、免疫関連遺伝子の発現シグネチャーを解析した。その結果、1)は2)や3)とは明らかに異なる独自の免疫学的特徴を示した。1)では3)と比較して「リンパ球増殖(T細胞活性化を伴う免疫応答)」が、2)と比較して「白血球遊走の増加(抗菌ペプチドを介した液性免疫応答を伴う)」がそれぞれ活性化していた。本成果は既に英語論文化した。 腫瘍組織内の免疫組織をさらに詳細に解析する手段としてマイクロディッセクション法に代わりGeoMx whole transcriptome atlas (WTA)による解析を導入した。合計6症例についてそれぞれ6カ所リンパ濾胞領域と腫瘍組織領域、合計72領域について解析した。6症例の内訳は転移有り・無しがそれぞれ3例、HPV関連腫瘍はそれぞれに2例含まれている。解析を進めた結果、HPV関連の中咽頭癌のリンパ濾胞領域ではHPV陰性と比較してB細胞のアポトーシスが抑制されていることが判明した。腫瘍組織領域およびリンパ濾胞領域免疫関連遺伝子の発現シグネチャーはリンパ節転移の有無によって大きく異なることが判明した。これらのシグネチャーは、免疫制御および転移促進に関与している可能性が高い。さらに本研究では、転移陰性症例でのTh2優位の免疫応答とエストロゲンシグナル伝達、転移陽性症例での胆汁酸代謝の促進が、HPV関連中咽頭癌のリンパ節転移の調節に大きく関与することを示している。本研究の成果は、リンパ節転移の予防および患者予後の改善に向けた新たな免疫療法標的が生まれる可能性を示しており、その概要は、現在、英語論文に投稿中である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)マイクロディッセクション法に関する問題点を克服して解析は順調に進んでいる。その結果、本研究テーマから英語論文第3報が受理された。 2)引き続く解析の準備も順調で、第4報を投稿中である。 以上から、研究は概ね順調に推移している、と判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
引き続き、中咽頭癌原発巣摘出標本について扁桃組織・腫瘍組織に分けて遺伝子発現プロフィールの解析を続ける。さらに昨年度に続き、発癌・転移を予測するためのツールとしての遺伝子発現シグネチャーをさらに限定していく。空間的解析をさらに活用して、さらに詳細な転移抑制・促進メカニズムを解明する。特にエストロゲン経路によるリンパ機構の活性化メカニズムや好酸球・肥満細胞系の活性化による転移制御は未知の領域であり、優先的に解明していく。これまでの研究の結果、グラム陰性菌やヒト乳頭腫ウイルスに関わる因子と結合するToll-like Receptor 4 (TLR4)経路の活性化が転移抑制に重要であることが判明した。転移メカニズムの解明の観点から細菌叢・ウイルス叢の分析も進め、本研究をさらに発展させる。 口腔癌では三次リンパ様構造を探索し、腫瘍空間におけるRNA発現レベル解析手法を適用して、口腔白板症の癌化から転移へ至るプロセスを解明する。 そして、これらの研究成果をさらに英語論文化するとともに、学会発表を従来以上に行って研究成果を周知していく。
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| Causes of Carryover |
今年度は研究成果を講評するための論文の執筆・校正、追加実験などの業務が多く発生し、そのための物品費や論文投稿費が発生した。一方で学会出張は国内のみで、目標とした国際学会での発表は行っておらず、旅費の出費が少なかった。 次年度は、さらに物品費が多くなることが予想されるが、是非、海外での学会発表を行い成果を公表する計画である。
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