2021 Fiscal Year Annual Research Report
Role of ketone body metabolism in calorie restriction-mediated healthy lifespan extension
Project/Area Number |
21H03353
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
久米 真司 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00452235)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ケトン体 / 健康寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ケトン体と寿命:野生型マウスに比し、全身でケトン体産生が欠失するHmgcs2欠損マウスは短命であり、その寿命の短縮は1,3-ブタンジオール(β-OHB前駆物質)の投与により回復した。また、24週齢からの野生型マウスに対する長期1,3-ブタンジオール投与もまた、寿命短縮をもたらしたことから、哺乳類の寿命においては、血中ケトン体濃度の消失、過上昇いずれも有害であることが明らかとなった。一方、72週齢の野生型マウス、ApoE欠損マウスといった、老化や動脈硬化の病態モデルに対する1,3-ブタンジオール投与は寿命延長をもたらしたことから、ケトン体は何らかの臓器障害がある個体において、臓器保護的に働く可能性が示唆された。 2)ケトン体のmTORC1シグナルへの効果:近位尿細管特異的Tsc1欠損マウスは高度尿細管障害により4-5週で死亡するが、1,3BD食群では腎腫大・尿細管障害の改善を認め、生存期間が延長した。ポドサイト特異的Tsc1欠損マウスは高度蛋白尿を呈し、5-8週で死亡したが、1,3BD食群では、蛋白尿の改善は見られないものの、生存期間の延長を認めた。骨格筋特異的Tsc1欠損マウスは筋萎縮を認め、3-5週で死亡し、1,3BD食による表現系の改善は認められなかった。膵β細胞特異的Tsc1欠損マウスはβ細胞の腫大、耐糖能の改善を認めたが、1,3BD食では表現型の改善は認めなかった。肝臓特異的Tsc1欠損マウスでは既報にある肝細胞癌など明らかな表現系は認めなかったが、1,3BD食群でmTORC1シグナルの抑制は確認された。 以上のことからケトン体によるmTORC1抑制効果は臓器特異性があり、とくに腎近位尿細管および肝臓において、mTORC1過剰亢進の抑制を介したケトン体の臓器保護効果が期待できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は主に臓器局所のケトン体代謝の役割について検討を進める。 ①Cre-loxシステムで骨格筋、腎臓、脂肪、心筋、膵臓、肝臓、神経(脳)特異的Hmgcs2欠損マウスを作製し、48時間絶食での機能変化を評価し、臓器ケトン体産生の生理的役割を解明すると共に、実験1)-①同様の検討で健康寿命に対する役割も解明する。また腎臓、心筋、神経に関しては高齢者に多く見られる動脈硬化関連臓器障害に対するケトン体の役割を検証する為、マウスの腎硬化症・心筋梗塞・慢性脳虚血モデルを用いた臓器障害に対するHmgcs2欠損の意義を解明する。 ②骨格筋、腎臓、脂肪、心筋、膵臓、神経(脳)特異的Scot欠損マウスを作製し、48時間絶食での機能変化を検討し、臓器ケトン体利用の生理的役割を解明する。また、実験2)-①同様に老化、臓器障害モデルを用い、臓器局所ケトン体利用の臓器障害における役割を解明する。 ③組織特異的Hmgcs2欠損では肝臓からのケトン体供給が維持されるため、臓器局所のケトン体産生の意義を検証できない可能性が生まれる。そこで、組織特異的Hmgcs2ノックインマウスを新たに作製し、全身Hmgcs2欠損マウスとの交配により、組織特異的Cre発現を誘導することでHmgcs2を再導入し、ある一臓器でのみケトン体産生が回復するマウスを作製し、実験2-①同様の実験を行い、臓器局所のケトン体産生の役割を解明する。
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