2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the physiological significance of the energy sensing system in the proximal small intestine
Project/Area Number |
21H03377
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
林 久由 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40238118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 典子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30440283)
笠原 尚哉 自治医科大学, 医学部, 助教 (50382891)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 絶食 / ケトン体 / グルコース代謝 / 小腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶食やケトン食などがもたらす健康上の利点は、単にフリーラジカル生成の減少や体重減少の結果ではないことが多くの実験から明らかにされている。絶食は進化的に保存された適応的な細胞反応を惹起させ、それらは臓器間で統合される。結果として全身のグルコース代謝の改善に繋がると考えられている。絶食時にはケトン体を産生する代謝スイッチが働き、脂肪組織に貯蔵されているトリグリセリドからケトン体が肝臓で産生され、代替エネルギーとして脳などで使用されている。特に腸管では絶食時にどのようにその機能活性が調節されているかは十分に明らかにされていない。このため上部小腸のグルコース輸送活性化機構にケトン体が関与しているかどうかを検討した。マウス上部小腸を摘出し、ユッシングチャンバー法を用いて、グルコース誘発性の短絡電流上昇をグルコース吸収機能として評価した。摘出標本を5時間インキュベートし、絶食状態をin vitroで模倣した。自由摂食マウスの摘出直後の上部小腸においては、グルコース誘発性の短絡電流上昇は観察されなかった。しかし、絶食マウスの摘出直後の上部小腸においてはグルコース誘発性の短絡電流上昇が確認された。自由摂食マウスの上部小腸を用いて、チャンバー内で5時間インキュベーションを行うと、全例ではないが短絡電流上昇が観察された。これは摘出小腸組織でも絶食状態を模倣できることを示唆している。代用液にケトン体を添加し、同様の測定を行った。しかし、グルコース誘発性の短絡電流上昇は大きくは亢進しなかった。以上より、本研究では絶食マウスにおけるグルコース誘発性短絡電流上昇にはケトン体が効果であるとはいえず、上部小腸におけるSGLT1活性上昇を促進する要因を解明するためにはさらなる検討が必要であった。一方で小腸オルガノイドより、単層上皮の機能測定系は確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル動物の作成に関して遅れており、上部小腸の部位特異性に関して十分検討ができていないが、小腸オルガノイドの機能測定系は確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
小腸上皮は吸収機能を有する絨毛部と分泌機能を有する陰窩部の2つから構成されている。陰窩部の底には、自己複製能と上皮細胞への分化能を持った腸幹細胞が存在する。腸幹細胞は、絨毛へ移行ながら分化し、管腔内に脱落することにより数日で小腸上皮を作り変え、様々な栄養状態に対応している。小腸の機能をin vitroで評価するために、Caco-2細胞の単層培養系や動物個体から摘出した標本が使われてきた。近年、単離培養した腸幹細胞を用い、生体内の腸組織に似た「小腸オルガノイド」の培養技術が開発された。小腸オルガノイドは、管腔を内面に向けた球状の構造体であり、測定すべき栄養素などを投与することができない。このため、小腸オルガノイドの単層培養法を確立し、栄養素吸収機能評価系を確立する。昨年度確立された手法をもちい、小腸上部ならびに下部から単層上皮を作成する。タイト結合の硬性タンパク質、栄養素吸収機能を検討する。また、in vitroで、代用液中から栄養素を除去することにより、絶食の効果を検討する。
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