2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the physiological significance of the energy sensing system in the proximal small intestine
Project/Area Number |
21H03377
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
林 久由 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40238118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 典子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30440283)
笠原 尚哉 自治医科大学, 医学部, 助教 (50382891)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | SGLT1 / 絶食 / 摂食 / 栄養素シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
小腸の機能としては、消化、吸収、そして内容物を移送する運動機能がある。これは、摂取した栄養素を管腔側から効率的に消化・吸収するための機能である。胃から排出された内容物は空腸や回腸を移送され、この間に多量の消化酵素による管腔内消化を受け、中間的なオリゴ糖やオリゴペプチドまで分解される。さらに、微絨毛膜に存在する酵素により単糖やアミノ酸、そしてペプチドまで分解され、その後輸送体により速やかに吸収される。この機構は、小腸の長軸上、すなわち空腸や回腸において同様の機構が働くと考えられていた。また、炭水化物やタンパク質などの栄養素の吸収活性は、摂取する栄養素量に比例し増加すると一般的に考えられており、主なグルコース吸収は部位が輸送体の発現量が高いことから上部小腸であると考えられている。 マウス小腸より摘出した小腸を用いてSGLT1輸送活性をUssingチャンバー法で測定すると、自由摂食群の上部小腸ではグルコース吸収活性はほとんど観察されなかった。しかし、マウスを絶食させると輸送活性は有意に上昇した。免疫蛍光染色を行いSGLT1の細胞内局在を調べると、自由摂食条件下の空腸や回腸ではSGLT1は微絨毛にのみ発現していた。絶食マウスでは自由摂食マウスと比べて明らかな変化は見られなかったが、空腸ではSGLT1の蛍光シグナルは、摂食状態より強いシグナルが観察された。そこで、ウェスタンブロッティング法で解析し、摂食条件下の空腸ではSGLT1のシグナルが著しく低下した。以上結果より、上部小腸のSGLT1輸送活性は空腹時に活性化され、摂食により不活性化されることが示唆された。また、小腸は部位特異的に管腔内の栄養素を感知し栄養素吸収機能が調節されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上部小腸の栄養素吸収機構は摂食の状態により、その吸収活性が大きく変化する。これは生体のエネルギー状態を感知し、それに応じて栄養素吸収を調節する機構の存在が示唆される。研究開始時には、この機構の生理的意義並びにその分子機序を解明することを目的としていた。栄養素摂取量は、小腸のグルコース吸収機能にどのような影響を及ぼすかは、十分に明らかにされていない。我々は、Ussingチャンバー法を用いて、グルコース誘発性短絡電流(Isc)に対する絶食と摂食の影響をin vitroで検討した。グルコース誘発Isc上昇は、自由摂食マウスでは回腸で観察されたが、空腸ではほとんど観察されなかった。しかし、絶食マウスでは、回腸に加え、空腸でも大きなグルコース誘発性のIsc上昇が観察された。高グルコース食を摂取させたマウスでは、グルコースによるIscの増加は回腸のみで観察され、空腸では完全に抑制された。さらに、ウェスタンブロッティング法により解析したところ、摂食下の空腸では刷子縁膜におけるSGLT1の発現が著しく低下していた。代謝されないグルコースアナログである14C-メチルα-D-グルコピラノシドグルコース(MGP)を用いて、経上皮グルコースフラックスを評価した。摂食・絶食にかかわらず、グルコースの拡散成分の変化は観察されなかった。絶食マウスにおいては、空腸におけるSGLT1を介したMGPフラックスを増加させた。結論として、空腹時および摂食時の部位特異的なアップレギュレーションおよびダウンレギュレーション機構は、絶食後の効率的なグルコース吸収に重要であることが判明した。さらに、これらのメカニズムは、小腸がグルコース吸収を自己調節する能力に重要な役割を果たし、絶食後などに大量のグルコースを摂取した場合の高血糖を防いでいることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究では、マウス上部小腸のグルコース吸収活性を担うSGLT1は管腔内の何らかのシグナルを介してin vivo条件下で機能調節されることを示すことができた。本年度は、さらに活性調節機序を明らかにするためにin vitro条件下で、SGLT1機能調節が模倣できるか検討を行う。具体的には、絶食条件でSGLT1が活性化された上部小腸をマウスから摘出し、Ussingチャンバー法を用い管腔側に機能調節が予測される因子を添加し、SGLT1活性を電気生理学的に検討する。さらに下部小腸でも同様な見当も合わせて行う。生体組織を用いた、解析では詳細なメカニズムを解析することは困難なため、GFPタグをつけたSGLT1等を発現させた小腸モデル系を構築し、電気生理学的検討と、蛍光免疫学的手法を用いて合わせて検討を行う。
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