2021 Fiscal Year Annual Research Report
確率場データ解析のための積分・位相幾何的手法と期待オイラー標数法の新展開
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21H03403
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
栗木 哲 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (90195545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 隆彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00282715)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 期待オイラー標数法 / チューブ法 / ミンコフスキー汎関数 / 中心極限確率場 / 等方的キュムラント |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 一般次元の添字を持つ弱非ガウス確率場のレベルセットの期待ミンコフスキー汎関数の摂動展開を与えた.非ガウス性を高次のスペクトルで記述し,それらの関数の形で摂動展開を与えた.さらにはシミュレータの生成するデータを用いて,宇宙論研究で現れる非ガウス性の範囲で,摂動展開公式は現実をよく再現することを確認した. (2) 課題 (1) をさらに数学的に定式化,厳密化するために,独立同一分布に従うN個の確率場の基準化として定義される中心極限確率場 (central limit random field) を研究対象とした.また合同変換に対して不変な非ガウス性を記述するために合同変換について不変な等方的キュムラントを導入し,その関数の形で期待ミンコフスキー汎関数の漸近展開をNの漸近展開の形で与えた.その際に条件付き密度関数の漸近展開公式を用意した.最後にカイ2乗確率場を例題として,理論結果の正しさを確認した.また項目 (1) の結果との整合性も確認した. (3) ガウス確率場の最大値分布を近似するための期待オイラー標数法とチューブ法は,確率場の周辺分布が均一であるときには十分に研究されてきた.一方で周辺分布が不均一である場合,すなわち平均,分散が定数でない場合は十分には議論されていなかった.周辺分布が均一でない場合は,検定の文脈では検出力に相当し重要である.本年度はガウス確率場のKaruhunen-Loeve展開が有限である場合について,チューブ法の考えに基づいて,最大値の上側確率とその近似誤差のレートを導出した. (4) 宇宙の大規模構造の力学的統計解析の手法として,密度場の空間微分を含む3点統計量 (skewness parameters) を使う手法を提案した.実空間と赤方偏移空間においてそれらの理論値が計算できることを確認した.また標準的なアインシュタイン重力理論のもとでなりたつ3点統計量間の関係式を見出し,それが非標準理論のもとでどのように破れるのかを調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項目 (1), (3), (4) については,プレプリント発表,論文投稿,論文採択を比較的短期間でおこなうことができた.項目(2) についてはプレプリント (arXiv) の形で発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項目 (3) については,その結果を有限次元の表現をもたない (Karuhunen-Loeve展開が無限次元である)ガウス確率場に一般化する必要がある.また確率場が全くガウスでない確率場については現時点では何も分かっていない.例えば複数のt分布に従う検定統計量を用いて多重比較を行う場合には,チューブ法の特別な場合であるボンフェロニ法を用いることになる.そのような場合の近似誤差については今後研究期間中に調べる必要がある.また項目 (2) については引き続き論文刊行に向けた検討を行う.
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