2022 Fiscal Year Annual Research Report
計測スペクトラルBRDFの解析・編集・推定による高精細な質感表現
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21H03571
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岩崎 慶 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90379610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 宜典 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00295841)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レンダリング / BRDF / ノンパラメトリック表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
映像制作やデザインソフトウェアといったアプリケーションにおいて,実世界の材質の質感・外観をCGを用いて忠実に再現することが求められる.実世界の材質の反射率を計測して求められる計測BRDFは,材質の質感・外観を忠実に再現することが可能であるが,データ量が大きく,また計測した材質しか表現できないという問題点もある.反射率の計測には,最先端の手法を持ってしても数日を要するため,数多くの材質の反射率を計測することも難しい.そのため,計測BRDFを解析し,編集しやすくすることで,表現できる材質を増やすことが重要である.本研究は,計測スペクトラルBRDFを解析して編集できる形式で表現することを目的とする.計測BRDFは,入射方向と反射方向ごとの反射率のテーブルとして表現されている.実世界の材質の質感・外観を忠実に再現するためには,入射方向と反射方向を細かくサンプリングして反射率を計測する必要があるため,反射率のテーブルは膨大な数となっており,データ量が大きく,またユーザが反射率の膨大な生データを編集することは難しい.さらに,計測BRDFは,性質の異なる反射成分が混合された状態で計測された反射率であるため,これも編集を難しくしている原因である. 2022年度は,性質の異なる反射成分が混合された状態で計測された計測スペクトラルBRDFから,拡散反射成分や鏡面反射成分に分離する手法の研究を継続して行なった.具体的には,2021年度に開発した手法をさらに拡張し,鏡面反射成分を,フレネル反射成分と回折成分に分離する手法の開発を行なった.また,計測スペクトラルBRDFの鏡面反射成を編集しやすくするために,鏡面反射成分を,法線分布関数,フレネル項,幾何減衰項の積に分解する,ノンパラメトリック表現手法の開発を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,計測スペクトラルBRDFの意味的解析による成分分離手法と,計測スペクトラルBRDFのノンパラメトリック表現手法の開発を行なった.計測スペクトラルBRDFの意味的解析による成分分離手法では,等方性計測スペクトラルBRDFを対象として,まず拡散反射成分と鏡面反射成分に分離する. これは,波長ごとの等方性計測スペクトラルBRDFの平均化して求められる,無彩色BRDFをLambertianBRDFとMicrofacet BRDFの線形和からなる解析モデルにフィッティングする.フィッティングしたデータを教師データとして,計測データを拡散反射成分と鏡面反射成分に分離する.得られた鏡面反射成分は,フレネル項に依存する成分と,波長と同程度の微細な凹凸によって生じる回折成分に分解する.フレネル項は入射方向とハーフベクトルとのなす角に依存するため,最小二乗法により,入射方向とハーフベクトルとのなす角に依存する成分を抽出する.鏡面反射成分の残りの成分は,差分ベクトルのなす角に依存すると考えられ,これを回折成分とする. 計測BRDFのノンパラメトリック表現手法として,Bagherらの手法が提案されていたが,Bagherらの手法は等方性BRDFに限られているという問題がある.本研究では,Bagherらの手法を,異方性計測スペクトラルBRDFに適用できるように拡張した.基礎実験として,RGB成分の異方性計測BRDFを対象として,ノンパラメトリック表現し,基の異方性計測BRDFを用いて生成した参照画像と,ノンパラメトリック表現したBRDFを用いて生成した画像との画質評価を行なった.また,抽出した法線分布関数を編集することで,BRDFのハイライトを編集できるシステムを開発した.基礎実験をまとめて,国内会議で発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
計測スペクトラルBRDFの意味的解析による成分分離手法により,拡散反射成分と鏡面反射成分(フレネル項成分と回折成分)に分離することが可能になった.これにより,BRDFの拡散色を編集することが可能になった.さらに,ノンパラメトリック表現により,BRDFのハイライトをユーザが自由に編集することが可能となった.計測スペクトラルBRDFの意味的解析による成分分離手法およびノンパラメトリック表現により,基の計測スペクトラルBRDFよりもデータサイズを削減することが可能になったが,それでも1つの材質につき数MBから数十MBを必要とする.現状,計測スペクトラルBRDFの方向成分の類似性に基づいて,方向次元に関して圧縮しているが,波長次元については圧縮を行なっていない.近接した波長では,反射率も類似していることが考えられるため,波長次元に関するコヒーレンスを考慮して更なるデータ圧縮を試みる. 計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現では,回折を考慮したtwo-scale microfacet reflectance modelへのフィッティングを試みる.
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