2021 Fiscal Year Annual Research Report
アイソスケープを用いた外洋性高次捕食者の回遊経路追跡手法の開発
Project/Area Number |
21H03579
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
松林 順 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (30756052)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 知里 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 副主任研究員 (40435839)
長田 穣 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 任期付研究員 (90750084)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | アイソスケープ / カツオ / 炭素安定同位体比 / 窒素安定同位体比 / Iso-logging |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、西部太平洋の広範囲を回遊するカツオを対象に、同位体分析に基づいて個体ごとに回遊経路を復元する手法の開発に取り組んでいる。今年度は、当該海域において同位体比の空間変異の程度を把握するため、西部太平洋の多地点で採取されたカツオの筋肉の炭素・窒素安定同位体比データを収集および測定した。既知の同位体比の空間分布から、同位体比が顕著に異なると想定される3つの海域(熱帯・亜熱帯・北太平洋)ごとにデータをグループ分けし、サポートベクターマシンによるクラスタリングを実施した。また、地理的な同位体比の傾向がベースラインの同位体比(アイソスケープ)の変動によるものか、カツオの食性の違いによるものかを識別するため、同じ体サイズで同位体比が顕著に異なる個体を5個体選出し、アミノ酸の窒素安定同位体比分析を実施した。 クラスター解析の結果、西部太平洋においては、少なくとも①北緯10度以南の熱帯海域、②北緯10度-25度の亜熱帯海域、③北緯25度以北の北太平洋海域の3海域を炭素・窒素安定同位体比で識別可能であることが示された。また、アミノ酸の窒素安定同位体比分析に基づく栄養段階の比較では、同位体比が顕著に異なる個体であっても、栄養段階はほぼ同じであることが示された。したがって、カツオの地理的な同位体比の差異は、ベースラインの同位体比の変動を反映していることが明らかになった。 今後の課題として、北太平洋では稚魚のサンプルが得られないことから、判別分析の結果がアイソスケープだけではなく体サイズの違いを反映している可能性がある。したがって、今後は体長を考慮したうえで同位体比の空間分布を推定できる地理統計モデルを用いた解析を実施する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西部太平洋の広域から採取されたカツオの炭素・窒素安定同位体比データを収集することに成功し、顕著な空間変異が存在することを確かめることができた。今後は、モデルの改良とカツオの同位体比の時系列変化を復元する手法を構築することで、同位体比に基づく回遊経路復元が実現する公算が高まった。
|
Strategy for Future Research Activity |
アイソスケープ作成においては、データが不足している海域から重点的に稚魚のサンプリングを行い、また地理統計モデルを用いることで予測を精緻化させる。また、カツオの水晶体を時系列同位体比分析の手法開発を進める。
|