2023 Fiscal Year Annual Research Report
Antarctic Ice Sheet History during warm Pliocene: IODP Exp. 379 Amundsen Sea
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21H03590
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 恵司 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40467858)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 南極氷床 / 鮮新世 / 珪藻化石 / アムンゼン海 / IODP Exp.379 / 古地磁気逆転層準 / ガウスーギルバート境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
西南極アムンゼン海周辺は,現代の温暖化に対し最も顕著に氷床量が減少しており、南極氷床完全崩壊の証拠が最も顕著に表れると期待される海域で、IODP Exp.379航海で掘削が実施された。研究代表者は珪藻古生物学者として乗船研究に従事、古地磁気や放散虫化石研究者と協力のもと年代モデルを構築、これまでにない堆積速度(1000年で20-60cm)を有する堆積物であることを明らかにした。また共同研究者は堆積物研究者として乗船、色味や帯磁率が岩相の特徴をよく反映していることを明らかにした。そこで4つの鮮新世温暖期地磁気逆転層準(3.33Ma, 3.60Ma, 4.30Ma, 4.63Ma)に着目し、確度・精度の高い対比のもと西南極氷床・東南極氷床の相違や位相を明らかにすべく、本研究に取り組んできた。 Site U1532の鮮新統より採取された総計528試料(最小サンプル間隔5cm)で定量スライドを作成し、可能な限り400個体以上をの珪藻化石を同定、必要に応じて複数枚検鏡を実施した。その結果400を超える試料から49属120タクサの珪藻化石を識別した。 ガウスーギルバート古地磁気境界(~3.6Ma)に着目し、精度・確度の高い地域間対比を行ったところ、西南極Site U1532では、ウィルクスランド沖東南極Site U1361より、MIS Gi1の生物生産量が明らかに高く、西南極氷床の崩壊が東南極氷床の崩壊よりも先行していたことが示唆された。 また種間クラスター解析を実施したことにより、化石種Thalassiosira torokinaは沿岸の寒冷環境(夏季表層水温-1℃)に適応した種であることが明らかになった。因子分析により1)沿岸寒冷環境、2)夏季生物生産、3)周南極海流起源の影響(Stormの頻度)などが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)当初予定していた4層準、3.33Ma, 3.60Ma(Gi1), 4.30Ma, 4.63Ma、に加え、 ~3.48Ma, ~3.57Ma、~3.79Ma, ~3.88 Ma、 高分解能珪藻化石分析が行われ、総計8層準の群集動態が明らかにされ、うち6層準においては鉛同位体等、物理・化学特性との関係が明らかにすることができた。その結果、従来鮮新世温暖期として注目されきた3.0-3.3Maよりも、それ以前の鮮新世間氷期がより温暖であったことが明らかになった。 2)4.63Ma前後の間氷期が寒冷であったことは示唆する結果は、南極氷床で大規模な不整合を形成した氷床拡大とその後、大陸側が深くなる南極特有の陸だなが氷床の拡大成長に影響あたえたとするオーバーディープニング仮説(Bart&Iwai, 2012)を支持するデータが新たに得られた。 3)種間クラスター解析を行うことで、一部の化石種の古生態を類推することに成功した。 以上のように、当初期待していた以上の成果が得られたことから、予定していた計画以上に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルシミュレーションや鉛同位体、再堆積化石の産出状況等を詳細に検討し、鮮新世温暖期の西南極氷床の動態について、複数氷期・間氷期間の相同性・相違性について検討してゆく。 また、国内外の共同研究者と連絡を密にとり、国際共著論文の公表にむけた準備を進める。
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