2021 Fiscal Year Annual Research Report
Environmental behaviors and biological effects of halo-mix PAHs
Project/Area Number |
21H03605
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
大浦 健 名城大学, 農学部, 教授 (60315851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新妻 靖章 名城大学, 農学部, 教授 (00387763)
グルゲ キールティ・シリ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長補佐 (50391446)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハロミックスPAHs / ハロゲン化PAHs / 有機ハロゲン化合物 / 未規制物質 / 発生源 / 環境動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロミックス(Cl/Br)PAHの合成として、pyreneを母核PAHとし、塩素ならびに臭素原子が置換されたCl/Br-pyreneの合成を行った。炭酸プロピレンを反応溶媒とし、N-クロロコハク酸イミド(NCS)を所定量加え100℃、30分、塩素化を行った後、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)を同反応液に所定量加え、同条件下で反応させた。反応生成物は、メタノール/水による再結晶後、沈殿生成物をHPLCによって分離精製した。その結果、複数の構造異性体の生成が確認されたが、生成量がそれぞれで大きく異なることがわかった。そこで最も生成量が多かった化合物をHPLCで分取した結果、2種のCl/Br-pyreneを含む精製物が得られた。これらは臭素原子が対称的に置換された構造を持つCl/Br-pyreneと推測された。 得られた精製物を標準物質として工場跡地の土壌試料をGC-Orbitrap MSで分析した結果、Cl/Br-pyreneが0.003~1.3 ug/g(SIMモード)で実際の環境サンプルにも存在することが確認された。また、Cl/Br-pyreneとHPAHsの濃度相関を調べた結果、何れのHPAHsもCl/Br-pyreneと有意(p<0.01)な濃度相関を示した。よってCl/Br-pyreneの生成はpyrene(PAHs)が生成した後、塩素化ならびに臭素化が進行したことが示唆された。さらに、同土壌試料をSCANモードで測定した結果、ほぼ同程度の濃度で定量分析が可能であることがわかった。このことから、GC-Orbitrap MSのSCAN分析はハロミックスPAHsのノンターゲット分析に適応できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで未解明であったハロミックスPAHを1ポット合成で作成することができた一方で、分離精製過程で多大な時間を要した。反応副生成物が多い試料の分取には高分離性能と高負荷量と相反する性能のカラムが必要となるため、状況の打開には更なる検討が必要である。分析結果においては、限られた分析試料ではあったが、試料中からハロミックスPAHを検出でき、初めて定量解析が可能となった。以上のことから、初年度で十分量のハロミックスPAHが得られ、分析方法まで確立できたことは順調に計画が遂行されていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
環境分析に先立ち、上記作製したハロミックスPAHsの高感度分離分析法を確立する。分析装置には高分解能GC/Orbitrap-MS(本学設置済み)を用いて、EI法もしくはCI法による最適なイオン化法ならびに各種カラムの分離特性を検討し最適な分離分析条件の確立を目指す。ハロミックスPAHsの環境試料には比較的汚染度が高い大気・水圏に限定する。大気試料には石炭煤煙の被害が著しいモンゴル・ウランバートルの大気粉塵試料(2020年夏季・冬季採取済みで今後も継続可能)やインド・ニューデリー(2019年夏季・冬季採取済みで今後も継続可能)の他、国内では名古屋港ならびに東京湾の工業地帯において大気試料を採取してハロミックスPAHsの分析に供する。このとき発生源マーカーとして、有機物であるホパン類(化石資源燃焼マーカー)、レボグルコサンや高級脂肪酸(バイオマス燃焼マーカー)、重金属類(エネルギー分散型蛍光X線装置:本格設置済み)も併せて分析し、これら発生源マーカーとの関連性から発生源の推定も併せて実施する。一方、水圏環境では名古屋港や東京湾の底質ならびに河川水を分析し、ハロミックスPAHsの固/液分配特性を明らかにする。これらの水圏汚染データは2023年度から開始する水圏生物における生体蓄積性を含めた水圏環境動態解析に適応する。 ハロミックスPAHsの生体毒性は芳香族類の代謝に関連する代表的な核内受容体であるAhRとの結合活性をIn vitro試験にて評価する。AhRとの結合活性はマウス肝ガン細胞によるCALUXアッセイを実施し、ハロミックスPAHsそれぞれの相対毒性係数(REP)を算出し、環境濃度を乗じた毒性等量(TEQ)から暴露リスクを推定する。
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Research Products
(4 results)