2021 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of eco-behavioural and physiological response indices of wildlife to rural depopulations and climate changes
Project/Area Number |
21H03658
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
角田 裕志 埼玉県環境科学国際センター, 自然環境担当, 専門研究員 (50601481)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江成 広斗 山形大学, 農学部, 教授 (90584128)
嶌本 樹 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (80825620)
秦 彩夏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (30781695)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 人口減少 / 極端気象 / 野生動物 / 行動生態 / ストレスホルモン / 人為干渉 / Landscape of fear |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生態学(バイオロギング・テレメトリ法)・行動学(カメラトラップ法・ボイストラップ法)・生理学(ストレスホルモン生化学分析・安定同位体比分析・個体分析)の統合的なアプローチによって、人為撹乱低下や極端気象の増加に対する野生動物の応答レベルを定量化することを目的とする。令和3年度は特に人為撹乱の低下に対する生態・行動・生理的応答を把握する研究として、東日本の調査サイトにおいて(1)野外自動観測機器による野生動物の行動生態調査および、(2)人為撹乱に対する生理生態的応答を把握するための実験系確立の2課題に取り組んだ。 (1)に関連して、ニホンジカ等の野生動物の行動観察を行う目的で、福島県南会津町の里山地域と奥山地域のそれぞれにおいて自動撮影カメラを用いた野外調査を行った。また、埼玉県秩父市の奥山地域においても、自動撮影カメラを用いた行動観察調査を実施した。 捕獲をはじめとした人為攪乱の強度がニホンジカとニホンザルの行動(特に警戒行動)に及ぼす影響を明らかにするために、ボイストラップ法をもちいたモニタリングを実施した。モニタリングは福島県南会津町にて13か所(8~11月末)、青森県西目屋村にて8か所(4月~11月末)で実施し、データは現在解析中である。 (2)に関連して、ニホンジカにおいて体毛のコルチゾール測定系を確立するために、飼育下シカを対象にホルモン投薬試験を実施した。また、同時に糞でもコルチゾール測定が可能であるのかを検証した。しかし、投薬の前後で体毛および糞のコルチゾール濃度には変化がなかった。今後は投薬の量と頻度を変更し、再度検証を行う予定である。 飼育下シカ個体を対象に、体毛成長様式および餌資源の体毛安定同位体比への反映速度を検討するため実験を開始した。また、野生シカ個体67頭の農作物依存度を推定するため、体毛の安定同位体比分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島県南会津町、青森県西目屋村、埼玉県秩父市の各所で実施した野外調査による行動生態モニタリングでは、予定通り動画データと音声データを多数得ることができた。取得した行動データは順次解析を進めている。また、次年度から野生個体の糞中ストレスホルモン解析のためのサンプリングを計画しているため、糞サンプルの収集・保管方法などについて情報を整理してプロトコルを作成した。 飼育下個体を用いたニホンジカの体毛のコルチゾール測定系および糞のコルチゾール濃度変化を分析して、測定系の確立のための知見を得ることができた。また、飼育下実験では体毛成長様式や栄養の反映速度を把握するための実験系確立に向けた研究を開始した。さらに、ニホンジカ野生個体の体毛を用いた農作物依存度の把握についても分析を進めた。 以上のように、研究計画初年度に予定した各課題は計画通り進捗することができており、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
野生動物の行動生態把握を目的とした研究については、次年度以降も福島県南会津町、青森県西目屋村、埼玉県秩父市において自動撮影カメラや音声記録装置を使った調査を継続する。埼玉県秩父市の調査に関しては、研究協力機関である東京大学秩父演習林の協力を得て、野生動物の行動に影響を及ぼす可能性がある低木層植生や倒木の影響を考慮した新たな調査地点でのモニタリングを検討・計画する。野生動物の糞中ストレスホルモン分析のために、野外調査地点において糞サンプルの収集を開始する。 ストレスホルモン測定系の確立に向けた動物園での飼育実験と体毛へのホルモン物質の移行分析も継続する。さらに、農作物への依存度把握のための捕獲個体の体毛分析も継続して実施する。 また次年度からは、気候変動に伴う豪雪や猛暑などの極端気象に対する野生動物の行動・生理生態的応答把握を目的としたバイオロギング調査を開始する。この調査に向け、東北地方の山間部と関東平野の調査サイトにおいて、中大型哺乳類の捕獲とGPS首輪の装着による個体追跡調査を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)