2021 Fiscal Year Annual Research Report
焼畑による地域資源の活用と創出:日本各地の焼畑復活から描く食・森・地域の再構築
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21H03697
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
鈴木 玲治 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (60378825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557) [Withdrawn]
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
大石 高典 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30528724)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 教授 (90447988)
河野 元子 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 客員准教授 (80552017)
矢野 善久 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (20230287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 環境調和型農林水産業 / 在来知 / 地域ブランド化 / 森林資源利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は滋賀県余呉町中河内のススキ草地を伐開し、焼畑によるヤマカブラの栽培を行った。平地に近い場所を焼畑に拓いたため水はけが悪く、夏の気温が上がらなかったことから8月下旬に黒斑病が発生し、例年に比べるとカブの収量が低下した。収穫できたヤマカブラについては、例年通り京都市のレストランや漬物屋に食材として提供しており、独特の風味と食感を持つ在来作物として高い評価を得ている。 また、今年度は焼畑休閑地での植生調査を行った。ササ群落を拓いて11年が経過した休閑地では休閑初期に萌芽再生したタニウツギが優占し、種多様性は低いものの再度焼畑を拓くに十分なバイオマス量が回復していた。一方、低木林を焼畑に拓いて9~10年が経過した休閑地では先駆性の高木と萌芽性の低木が混成し、比較的種多様性の高い群落となっていた。今後の遷移の進行に伴い、多様度の高い陽樹林が再生していくことが期待される。多様度やバイオマス量などの基礎データを蓄積しながら、各々の休閑地の特性に適した伐採サイクルをモデル化したい。 前年の焼畑で伐採したスギの幹はキャンプでの調理・暖取り等に活用するため、ウッドロケットトーチに加工して燃焼時間や燃焼温度の測定を行った。比較のためコナラ、シラカバでも同様の実験を行ったが、スギの方が火つきと火持ちのバランスがよく、調理・暖取り用に適していることが示唆された。 2022年3月には「第3回 焼畑フォーラム」を余呉町で開催し、焼畑による食・森・地域の再生や次世代への継承などをテーマに、日本各地の焼畑実践団体による活発な議論が行われた。コロナ禍のため対面とZOOMでのハイブリッド形式で運営すると共にYouTubeでのライブ配信も行ったが、YouTube視聴回数は当日に290回、3月末時点で700回を超えており、焼畑実践に興味を持つ様々な立場の人々に対し効果的な情報発信ができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
余呉町での焼畑実践は毎年順調に行われており、在来知の検証に必要な科学的データの蓄積も進んでいる。 焼畑による放置人工林の再生については、立地別のスギの強度試験とスギ丸太を加工したウッドロケットストーブの燃焼試験によるデータが蓄積できており、スギの品質に応じた利用法の検討が進んでいる。 在来作物の地域ブランド化については、ヤマカブラの食感・食味試験や機能性成分の分析を進めており、他のカブと比較したヤマカブラの特長が抽出されつつある。 全国の焼畑実践地での調査については、コロナ禍で多少の遅れがあるが、必要最低限の現地調査や情報共有はできている。また、焼畑フォーラムによる活発な意見交換も行っており、各地域の焼畑復活の核となった地域固有の要因や普遍的要因の抽出を進めている。 以上より、交付申請書に記載した計画に沿って、概ね順調な調査研究活動を展開中であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、農山村に眠る地域資源の活用により食・森・地域を有機的に繋ぎ、新たな地域資源を創出する有効な手段として、焼畑の果たしうる役割を実証的に検証することを最終的な目的としている。 今後も余呉での焼畑実践を継続しながら、特に放置植林地のスギの活用とヤマカブラの地域ブランド化に力点をおいた調査研究活動を展開したい。 また、日本各地で営まれる焼畑地で聞き取り調査や参与観察を行い、各々の地域の生態環境に応じた作物栽培や火入れのあり方、焼畑運営の社会経済的な存続要因や成立過程、現状での利点や問題点を整理する予定である。2024年3月には、日本各地の焼畑実践団体間の情報交換と日本の焼畑の将来像に関する議論を深めるため、滋賀県余呉町において第4回焼畑フォーラムを開催する。
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