2021 Fiscal Year Annual Research Report
Light and Shadow of Morality Politics in Southeast Asia: Subjectivities of Emerging Middle Class and Contested Liberal Democracy
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21H03704
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
日下 渉 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80536590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携講師 (00608185)
佐々木 拓雄 久留米大学, 法学部, 教授 (10461469)
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (10513517)
田村 慶子 北九州市立大学, 法学部, 教授 (90197575)
清水 展 関西大学, 政策創造学部, 客員教授 (70126085)
白石 奈津子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (90875460)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東南アジア / 自由民主主義 / 新興中間層 / 新自由主義 / 道徳政治 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、21世紀にはいって各国の自由民主主義が不安定化し、権威主義的な政治が台頭してきている理由を、急速な近代化と経済成長のなかから形成された新興中間層に着目して、東南アジアの事例から明らかにすることである。今年度は初年度であり、また新型コロナウイルスによるパンデミックに伴い海外渡航の制約も厳しかったため、文献研究を中心に行った。 第一に、21世紀における民主主義の後退に関する理論研究では、情報通信技術を中心とするグローバルな経済構造のもと凋落する中間層がポピュリズムの支持基盤になっていることを指摘するものが多いが、研究代表者の専門とするフィリピンなど新興国ではむしろ台頭する中間層とポピュリズムとの共鳴が重要であるとの知見を得た。第二に、海外移民、コールセンター労働者、国際海運に従事する船員、再定住を強いられた都市貧困層など、新時代のフィリピン人を対象にしたエスノグラフィーを読み込んでいき、ミシェル・フーコーのいう「新自由主義の統治性」が、社会階層を上昇しようとする多様な人びとに広範に作用していることを理解した。第三に、急激な近代化と社会変容が進んだため、新自由主義の主体性だけでなく、地縁・血縁に基づく相互扶助を重視する以前からの主体性や、そこから抜け出して近代的な自立を求める主体性も併存しており、それが政治や日常におけるコンフリクトの一因になっていると分かった。 こうした理論研究とフィリピン事例研究をもとに自らの研究を進め、オンライン研究会で報告を行い、他の諸国を専門とする分担者から、それぞれの国における状況などについて有意義なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスのパンデミックに伴う海外渡航や海外調査の制限がまだ強かったため、初年度のフィールド調査を行うことはできなかった。他方、腰を落ち着けて文献研究に専念できたので、進捗状況の遅れは今後挽回できる程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、今年度の文献研究を通じて得た知見をもとに、海外フィールド調査を行い、現場や人びとの実態について調査を進めていくことである。また、研究分担者が各地で行った調査結果を持ち寄り、研究会での意見交換を通じて、より一般的な仮説を構築していくことも試みたい。
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[Book] レジリエンス人類史2022
Author(s)
稲村 哲也、山極 壽一、清水 展、阿部 健一 編
Total Pages
526
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
481400401X
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