2022 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線ミュオンによる富士山体内部の密度異常検出のための多地点同時観測網の構築
Project/Area Number |
21H03735
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
居島 薫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10345697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10399389)
永嶺 謙忠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (50010947)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宇宙線ミュオン / プラスチックシンチレータ / MPPC / FPGA / 富士山 |
Outline of Annual Research Achievements |
R4年度の主な実績は、既設1号機による継続観測と、本研究で新たに開発する宇宙線ミュオン観測装置(2号機)の製作である。 既設1号機による継続観測では、バックグランドが高い問題に直面しており、これまでに中間鉄散乱体の増設(厚さ:10cm、20cm、38cm)で軽減・改善を重ねてきたが、この方法で除去できるバックグランドはおおむね限界に達した。そこでこれまで2面であった検出器をさらに1面増設して、3重のコインシデンス処理に発展することを発想し、その有効性を計算した。実装はR5年度初頭に計画している。増設する計測装置の主要部品は既存の物品を流用するため、大きな予算変更はない。この改良により、これまで標準岩石換算で500m程度までの情報しか透視出来ていなかったが、3倍程度の深さまでの透視を目指す。順調に進むと山頂付近の外輪山の構造が現れる予定である。 2号機の開発は、コロナ禍で難航した半導体部品の調達を完了し、組み立ての最終段階に進むことが出来た。予備実験などを含めてまだ観測の実績は無い。R4年度の終盤に、シンチレータの強度不足による装置の変形・破損が判明したため、次年度への継続課題として改善策に着手した。 また、研究協力者により宇宙線ミュオンのシミュレーションが行われ、対象とするエネルギーを100TeVまで拡張した岩石透過率の結果が初めて得られた。富士山は巨大すぎるため、宇宙線ミュオンの高エネルギー領域の挙動を含める必要があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R3年度の実績報告において、コロナ禍と半導体不足による物品調達の遅れのため、研究計画の遅れを報告した。R4年度単年度については遅れは無かったが、R3年度に生じた遅れを引きずっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したが、1号機は3重のコインシデンス仕様へ変更し、バックグランドの軽減を試みる。6月から観測を再スタートして、統計を上げて12月頃に結果がでると目測される。2号機との連携を待たずに、この1号機の結果のみで初回の報告を目指す。 2号機は完成後ただちに1号機と同じ場所に設置して予備観測を開始する予定である。1号機との構造上の違いは、分解能が縦横にそれぞれ3倍向上していること、検出器が光電子増倍管からMPPCに変更したことである。前者により1画素当たりの強度は低下するが山頂付近棒の空間分解能は100mから33mになる。後者によりバックグランドノイズが増加することが想定されるため、データ量が増加することが懸念される。このためオンラインでコインシデンス処理した後にデータを転送する仕組みを検討する予定である。 これらの実績を元に、観測地点を交渉するタイミングを見極める予定である。 また、研究協力者により宇宙線ミュオンのシミュレーションを既に進めている。富士山のサイズほどの巨大な対象物に対しては、宇宙線ミュオンの減衰曲線が存在しない。つまり透過率から密度に変換する関数が存在しないため、本研究の結果とシミュレーション結果を相補的に用いながら、宇宙線ミュオンの高エネルギー領域のデータの提供につながることになる。
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