2023 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線ミュオンによる富士山体内部の密度異常検出のための多地点同時観測網の構築
Project/Area Number |
21H03735
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
居島 薫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10345697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10399389)
永嶺 謙忠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (50010947)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宇宙線ミュオン / プラスチックシンチレータ / MPPC / FPGA / 富士山 |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度の主な実績は、既設1号機による継続観測と、本研究で新たに開発する宇宙線ミュオン観測装置(2号機)の製作・設置である。 既設1号機による継続観測では、バックグランドが高い問題に直面しており、これまでに中間鉄散乱体の増設(厚さ:10cm、20cm、38cm)で軽減・改善を重ねてきたが、この方法で除去できるバックグランドは昨年度の時点でおおむね限界に達した。そこでこれまで2面であった検出器をさらに1面増設して、3重のコインシデンス処理に発展することを発想し、その有効性を計算した。本年度は、第3面の検出器を設計製作して9月に設置作業を実施、3カ月ほど調整を行い、12月末から本格的な測定を開始した。しかしながら、既存の検出器120本のうち30本程度が劣化したため、R6年度初頭に修理の計画を立てた。 2号機の開発は、前年度までにコロナ禍で難航した半導体部品の調達を完了し、組み立てを完了できた。計画では、富士吉田口の5合目を第2観測地点に想定していたが、まずは既設1号機のコンテナ内の隙間に設置して予備観測を実施することに計画を変更した。予備観測は12月末から開始しているが、本年度末の段階ではまだ統計が足りず、2号機の性能確認が不十分な状況にある。 また、継続的に研究協力者により宇宙線ミュオンのシミュレーションが行われ、長距離における宇宙線ミュオンの透過挙動に対する特性が明らかになった。この結果は「2023年度核データ+PHITS合同研究会(2023.11.17)茨城県東海村」で報告された。 また関連して、この研究を応用したテーマである古墳観測についても、「第8回文理融合シンポジウム 量子ビームで世界を探る(2023.11.3)国立科学博物館」において研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
R3年度の実績報告において、コロナ禍と半導体不足による物品調達の遅れのため、研究計画の遅れを報告した。R4-5年度単年度については遅れは無かったが、R3年度に生じた遅れを引きずっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したが、1号機は3重のコインシデンス仕様へ変更し、バックグランドの軽減を試みる。既存の検出器の劣化により測定データを使用できない期間が判明したため、再年度初頭に改修する。この研究の最終目的である第2地点に観測装置を設置することについては、設置場所の許可申請のために説得力を有する観測データの添付が不可欠と考え、まずは、設置して観測が可能な1号機と同じ場所で観測実績を積むことを優先している。最終年度であるR6年度は、データの統計を上げながら設置場所の交渉のタイミングをはかる。富士山の富士吉田口の5合目は積雪のため進入可能な期間が限定されるため、実際の設置作業は次の研究課題として申請することになることが予想される。 この研究課題内では、第2地点への移設に適応可能な状態までに装置の完成度を構造させることを今後の推進方策とする。 将来的には、さらに複数地点からなる立体計測と統計を上げるための多重化が見込まれる。現在はある程度の透視画像を得られるまでに数カ月を要する。観測装置を複数台並列に設置することで観測時間を短縮でき、時間分解能を向上できる。観測装置の有用性をPRできるまでにすることが本研究の目的である。 また、富士山の内部について人類は可視化できていないため、研究チームだけでなく納税者の知的好奇心に答えられる様な面白い画像の取得。地道なデータ解析にコストをかけて進めたい。
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