2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of He-3 alternative novel oxide neutron scintillator
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21H03736
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河口 範明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50642782)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シンチレータ / 中性子 / 中性子シンチレータ / 酸化物 / 結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、中性子計測において標準的な計測器媒体である3Heガス資源の枯渇が問題となっている。そもそも天然Heガスも需給が逼迫しているが、中性子計測に利用される3Heは天然He中に100万分の1しか含まれない希少資源のため、3Heガスを用いない中性子計測技術の重要性が高まってきている。3Heガス検出器の代替の本命は固体シンチレータ式検出器である。中性子シンチレータは中性子が物質中の6Liと6Li(n,α)3Hの核反応を起こして生じる励起エネルギーにより発光する材料で、光検出器と組み合わせることで中性子計測に利用できる。従来は3Heガス検出器が主に用いられてきたため、レントゲン・核医学や手荷物検査などで広く用いられるX線、ガンマ線用シンチレータに比べると中性子シンチレータの研究は十分ではなかった。 我々はこれまでに3He代替シンチレータとして、LiCaAlF6(LiCAF)単結晶シンチレータを開発した。LiCAFは潮解性がない材料の中で高い発光量を有しているが、製造において高度な雰囲気制御が必要なフッ化物であり、製造コストが高いなどの問題があった。そこで本研究ではより製造が容易で化学的安定性の高い酸化物結晶中性子シンチレータの探索研究を実施している。 本年度はLi6Y(BO3)3系、LiCaPO4系、Li2SnO3系、YBO3系、CsLiB6O10系、LiAl5O8系の酸化物結晶を中心に調査を進めた。Li6Y(BO3)3系の研究成果で1件の論文発表、LiCaPO4系の研究成果で2件の論文発表、Li2SnO3系の研究成果で2件の国内学会発表、YBO3系の研究成果で1件の国内学会発表、CsLiB6O10系の研究成果で1件の国内学会発表、LiAl5O8系の研究成果で3件の国内学会発表を行った。ここに挙げた以外にもいくつかの興味深い結果が得られており、次年度も引き続き検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高性能な酸化物結晶中性子シンチレータの開発を目指し、様々な組成のサンプルを作製、系統的に評価し、大多数のサンプルについては思わしくない性能しか得られなかったが、一部のサンプルについては期待できる性能が得られたり、派生的な研究結果も含め、論文や学会発表として報告できているため、本探索研究は順調に進展していると考えている。 Li6Y(BO3)3系、LiCaPO4系、Li2SnO3系、YBO3系、CsLiB6O10系、LiAl5O8系など、論文誌や応用物理学会などで報告した様々な研究の結果として、酸化物結晶中性子シンチレータに適した組成が明らかになりつつあると考えている。 多くの組成でドーパントに由来する発光を利用するが、ドーパントを添加するタイプの単結晶は融液成長時に、結晶化部に十分にドーパントが添加されず、徐々に融液のドーパント濃度が高くなり、単結晶育成が困難になる現象が起きる。それに対し、本年度得られたサンプルは母材の内因性発光が利用できる可能性があるものも存在し、これらの材料系ではドーパントの濃縮の問題が起きないことが期待される。こういった新機軸の材料系を見出したのも本年度の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
多数の新規組成の酸化物結晶中性子シンチレータサンプルを作製、評価したことで、様々な知見が得られており、次年度は計画通り、さらなる探索を続ける。 本年度得られたサンプルは母材の内因性発光が利用できる可能性があるものも存在し、これらの材料系では単結晶育成に特有のドーパントの濃縮の問題が起きないことが期待される。内因性発光についても引き続き注視しながら、次年度以降の研究を進めていきたい。 また、本年度はサンプルの作製と評価のサイクルが軌道に乗ってきており、そのため昨年度よりも多くの成果が挙げられたと考えている。次年度以降の探索研究もスムーズに進めていけるものと考えている。
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