2022 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類心筋細胞のT管膜構造の維持機構の解明と進化的意義の探求
Project/Area Number |
21H03794
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
氏原 嘉洋 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80610021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 聡 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00294413)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
杉田 修啓 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532104)
西辻 光希 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, スタッフサイエンティスト (60770823)
花島 章 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70572981)
橋本 謙 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80341080)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 心臓 / 心筋細胞 / T管膜 / バイオメカニクス / 脊椎動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の成体の心筋細胞には,形質膜が細胞の長軸方向と直交する方向に陥入した膜構造(T管膜)が周期的に存在する.T管膜の崩壊は重篤な心不全に直結するため,この特殊構造は哺乳類成体の心臓ポンプ機能に必要不可欠であるが,T管膜の崩壊メカニズムの詳細は不明である.興味深いことに,哺乳類以外の脊椎動物の心筋細胞には,T管膜は存在しない.そこで本研究では,T管膜の存在する心筋細胞とT管膜の存在しない心筋細胞を比較することで,T管膜の維持機構と哺乳類の心筋細胞がT管膜を獲得した進化的意義の解明を目指している.本年度は,まずT管膜の発達過程に注目した.哺乳類の心筋細胞は,生後間もなく分裂能が著しく低下し,収縮・弛緩に特化(分化)する過程でT管膜を発達させる.分裂を促進し分化を抑制する因子を心筋細胞特異的に過剰発現する遺伝子改変マウスの表現型を解析したところ,野生型マウスの心筋細胞と比較してT管膜の機能的な発達がみられず,心臓ポンプ機能も低かった.今後,遺伝子改変マウスの詳細な解析を進め,T管膜の形成機序についても調べていく.続いて,哺乳類が心筋細胞のT管膜を獲得した進化的意義をカルシウム濃度管理の観点から探るため,哺乳類に比べて心拍数が低く,T管膜を保持していないヘビ(爬虫類)の心臓から単離した心筋細胞のカルシウム濃度変化をラット(哺乳類)と比較した.予想通り,電気刺激により惹起したカルシウム濃度変化が完了するまでの時間は,ラットの方が著しく短かった.ただし,収縮を惹起するためのカルシウム濃度上昇に関しては,ラットの方が有意に速かったものの,弛緩を誘導する濃度低下に関してはヘビの方が有意に速かった.したがって,カルシウム濃度の迅速な低下には,T管膜は必ずしも重要ではないことが示唆された.今後,複数の動物モデルを用いてさらに検討を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子組み換えマウスや哺乳類以外の脊椎動物の心筋細胞のカルシウム濃度変化を計測し,T管膜の役割に関する知見を得ることが出来た.さらに,細胞構成要素レベルや臓器レベルの力学データも取得出来たため,順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,複数の動物モデルの心臓を多階層的に調べていく.分子動力学シミュレーションの専門家を研究分担者として追加し,分子レベルの挙動の解析を推進していく.
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Research Products
(12 results)