2023 Fiscal Year Annual Research Report
歩行補助用具の神経科学的特性の解明-虚弱高齢者の積極的な歩行機能改善を目指して
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21H03854
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
小幡 博基 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (70455377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歩行補助用具 / 歩行適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画のうち、通常歩行(CW)とT字杖歩行(TW)の「神経制御の共有の程度」を明らかにするための実験および解析を行った。健常成人10名(26.3±1.8歳)を対象に、左右二枚のベルトが独立して動作するスプリットトレッドミルを用い、左右非対称のベルト速度への歩行適応(スプリット条件への適応)を促す運動学習課題を行った。一方の歩行モード(CW or TW)で歩行適応後に左右対称のベルト速度に戻し、もう一方(TW or CW)の歩行モードでの脱適応の過程を観察することで、CWとTW間で歩行適応の影響をどの程度共有するのかを調べた(同歩行モードの適応、脱適応も実施)。歩行接地時の制動力ピーク成分の左右差を歩行適応の指標とした結果において、(1)TWではCWに比べてスプリット条件開始直後の左右差が終了直後の左右差に近い、(2)CWでの適応後にTWの脱適応において認められる適応の影響はCWでの適応後にCWの脱適応において認められる適応の影響に比べて小さい、(3) CWで適応し、TWの脱適応で適応の影響を忘却しようとしてもCWには適応の影響が残る(逆の条件でも同様)ことがわかった。 これらの結果から、(1)通常歩行とT字杖歩行の神経制御は独立性が強いこと、(2)T字杖での歩行は左右のベルト速度の変化にすぐに対応することはできるが、適応の影響は通常歩行へは転移しにくいことがわかった。この通常歩行とT字杖歩行の関係は、通常歩行と歩行器歩行の関係と同じであり、神経制御の共有の観点から考えると、歩行器やT字杖などの既存の歩行補助用具を用いた歩行トレーニングは通常歩行の維持・再獲得には効果的ではない可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究計画のうち、課題①「歩行適応」、研究④「介入研究」に関して、それぞれ進めることができた。課題①については順調に進展しており、研究成果の一部について、国際誌への論文投稿を行うことができた。研究②の「筋電図」および研究③「脳波」については、昨年度に引き続き解析を進めている。研究④については、協力施設で被検者を徐々に増やしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究申請の年次計画に従い、課題④である介入研究を引き続き実施する。 課題①の歩行適応課題を用いた歩行補助用具と通常歩行の「神経制御の共有」に関する研究についてはデータがまとまってきたため、レヴューのような形でまとめる作業に入ることを考えている。 課題②と③については2024年度中に解析を終え、その一部については論文にする予定である。
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