2023 Fiscal Year Annual Research Report
臨床倫理システムの理論的総仕上げと超高齢社会における高齢者のよい人生への貢献
Project/Area Number |
22H00602
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Iwate University of Health and Medical Sciences |
Principal Investigator |
清水 哲郎 岩手保健医療大学, 看護学部, 教授 (70117711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
会田 薫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任教授 (40507810)
大井 慈郎 岩手保健医療大学, 看護学部, 准教授 (10757959)
田代 志門 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50548550)
鈴木 晴香 (日笠晴香) 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 講師 (50724449)
秋葉 峻介 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (80861012)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 臨床倫理 / 高齢者 / 意思決定支援 / 共同意思決定 / 自律 / ACP |
Outline of Annual Research Achievements |
①《皆一緒》と《人それぞれ》の理論の哲学的検討 代表者は、人間がそもそも共同で生きるあり方をしておりながら、個々のユニークなあり方を保とうともする存在であることから、自律といっても共同性を免れず、共同といってもそれを個々が(自律的に)選んでいるというあり方になることを適切に言い拓くことを試みた。ACPのあり方における共同意思決定(SDM)のプロセスを自律と協働を考える分担者のグループは、さしあたっての成果を書籍にまとめた。
② ポスト健康寿命期(=老いによる人生の最終段階)にある高齢者のウェルビーイングの条件の明確化 代表者は、高齢者の衰えが進んで自立が崩れ、介助を要するようになるポスト健康寿命期においてもよい人生を続けられるようにする方策を、認知症が伴う場合と伴わない場合の双方に共通する〈老いによる弱さ〉の進行度別に検討し、成果の一部を論文にまとめた。また、その過程で、緩和的対応と積極的対応の統合という方針がWHOの2018年の諸文書に提起されており、それの基本が個々の良い人生を尺度として対応する方針であることを見出した。ACPをテーマとするグループは、①で言及した書籍にまとめる過程で、ACPの進め方を高齢者ケアを含む臨床現場の様々な場面により具体化することを、医療・ケア従事者と共同検討した。
③研究成果の臨床現場への還元および社会に向けての提言による社会貢献 サイト「臨床倫理ネットワーク日本」(臨床倫理プロジェクトのサイトを含む)を、医療・ケア従事者により便利なものとするため、改訂し、これまでの研究成果に基づきサイト内コンテンツを加え、ことに研究成果をより効果的に学習し、臨床実践に活かせるように支援するコンテンツの開発を進めた。また、岩手保健医療大学臨床倫理研究センターとして、本研究成果を提示すべくオンライン懇話会を3回開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した①《皆一緒》と《人それぞれ》の理論の哲学的検討については、共同意思決定プロセスについて担当の分担者が引き続き研究を進め、成果の発表をするにいたった点は予定した以上の進み方である。ただ、分担者の個々の成果をすり合わせる共同検討のための研究会開催に至らなかった点が、やや遅れたと評価せざるをえない。
②ポスト健康寿命期における高齢者のWell-Beingに関しては、認知症が伴う場合とそうでない場合を併せ考えることを始めたが、ACPの「予め」共同で合意形成をしておくあり方と、「予め」ではなく「直近の」選択と実施のための合意形成とを区別し、時間の流れ全体を見渡して考えることが、とくに認知症が伴う場合に有用と思われ、これについて今後研究組織内で議論する必要が見えてきている。
③研究成果の臨床現場への還元および社会に向けての提言による社会貢献 については、前年度作成した動画を本研究グループのサイトにアップしはしたが、それを医療・ケア従事者が使用して学習するための支援が不十分であり、R5 年度中に開発に努めたが、当初の予定から相当遅れてしまっている。またこの作業に力を注いだため、研究成果をより直接に臨床現場に還元するための臨床倫理オンライン懇話会が当初予定より少ない開催となったことも、次年度以降に積み残した仕事となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
①《皆一緒》と《人それぞれ》の理論の哲学的検討 「人間がそもそも共同で生きるあり方をしておりながら、個々のユニークなあり方を保とうともする存在である」と上記「研究実績の概要」に記したが、ここをさらに突き詰めて考える必要がある。この記述では不十分である。ここは特に研究代表者が深めたいところであり、なぜ「共同意思決定プロセス」(shared decision making)なのかを理解するための要となるはずのところである。
② ポスト健康寿命期(=老いによる人生の最終段階)にある高齢者のウェルビーイングの条件の明確化 自立が揺らぎ、周囲の介助が必要になっても、自らよい人生だと評価し続けられるようにするためには、先を見通し、予め考えて合意形成していくというACPがしっかり臨床に根付かなければならない。ただ、予め考えておくこと(ACP)と、そこで考えたことが直近の選択の課題となった時の合意形成とを区別しつつ、連続させる必要がある。この辺りについて共同検討を進めたい。
③研究成果の臨床現場への還元および社会に向けての提言による社会貢献 臨床の医療・ケア従事者が関心をもって取り組める e-ラーニングのシステムを開発することに重点をおき、併せてオンラインの臨床倫理事例検討会や懇話会をしっかり開催して、臨床への還元をしたい。
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Remarks |
(1)は本研究プロジェクトのトップページ、その下で(2)にR4年度に作成した動画をアップしてある。 (3)は本研究プロジェクトが医療・ケア従事者や市民に情報発信し、交流する拠点のトップページ
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[Book] 入院時重症患者対応メディエーター養成テキスト(日本臨床救急医学会 教育研修委員会 入院時重症患者対応メディエーター養成小委員会 編) 会田薫子執筆部分:「入院時重症患者対応メディエーターが知っておくべき臨床倫理」,「意思決定支援」(22-28)2023
Author(s)
三宅康史, 会田薫子, 笠岡俊志, 北村愛子, 佐藤圭介, 名取良弘, 別所晶子, 横田裕行, 和田仁孝, 芦刈淳太郎, 阿部靖子, 大宮かおり, 佐竹陽子, 篠原純史, 西嶋康浩
Total Pages
104
Publisher
ヘルス出版
ISBN
978-4-86719-067-8
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