2022 Fiscal Year Annual Research Report
Philosophy and Religion in Late Indian Buddhist Epistemology
Project/Area Number |
22H00605
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
護山 真也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60467199)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 基 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00272120)
小林 久泰 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (00613829)
志田 舞 (三代舞) 東京学芸大学, 教育学部, 日本学術振興会特別研究員RPD (40939485)
稲見 正浩 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70201936)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | ダルマキールティ / プラジュニャーカラグプタ / 哲学と宗教 / 苦諦 / 滅諦 / 自己認識 / 因明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,後期インド仏教認識論の展開に決定的な影響を与えたプラジュニャーカラグプタ(八世紀頃)の『認識論評釈荘厳』(PVA)のうち,特に宗教的論題が扱われる「プラマーナの確立」章注釈を主たる研究対象として,ヤマーリ復注の新出梵語写本に対する最新の研究成果を取り入れながら,国内外の関連研究者チームによる総合的解明を行うものである。本年度は,研究の基盤となるPVAのテキスト校訂と訳注研究を中心として,第1偈注釈箇所(稲見,小野),苦諦注釈箇所(護山),滅諦注釈箇所(三代),自己認識注釈箇所(小林)の各々の研究を進めることができた。 また,海外研究協力者であるEli Franco名誉教授(ライプチヒ大学)と松岡寛子博士(オーストリア科学アカデミー)を招聘し,第1回国際プラジュニャーカラグプタ研究ワークショップ(北海道大学,9月)を開催し,Franco 教授による基調講演のほか,関連研究発表(護山,三代,京極),テキスト講読などを実施することができた。これに加えて,年度内に2回の研究会(12月,2月)では,若手研究者による研究発表の機会(横山,木村,繆)を設けて,世代間の研究者交流と意見交換の促進をはかることができた。また,稲見氏の主導により,オンラインでの定期プラジュニャーカラグプタ研究会(毎週)と拡大プラジュニャーカラグプタ研究会(3月)が開催され,本科研とも連動する内容の研究が継続して進められている。 最後に,本科研の目的の一部である日本における因明文献調査に関して,1月に研究協力者の師氏の協力のもと,研究打合せが行われ,奈良における関連史跡を確認したこともここに報告する。 以上の本年度の成果は,『印度学仏教学研究』『プラジュニャーカラグプタ研究』等において公開されており,プラジュニャーカラグプタ研究会ホームページでも関連情報が記載されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 『認識論評釈荘厳』の文献学的研究: 『認識論評釈』第二章全285偈に対する『認識論評釈荘厳』の信頼あるテキスト校訂(梵・蔵)を作成するため,本年度は特にこれまで研究がなされていない,PVA ad PV II, 131cd-178(善逝の解説~苦諦の解説)の解読に集中する予定であったが,現時点ではPV II 161までのテキスト校訂と訳注研究を完了した段階にある。この進行はおおむね予定通りではあるが,来年度以降に進度をあげる必要がある。また,滅諦セクションに関する三代氏の研究も予定通りに進んでいる。ただし,術語索引作成のための基礎作業に着手するところまでは,達成できていない。 2) 仏教認識論における仏教教義解釈の特色の解明:プラジュニャーカラグプタの宗教哲学の価値を多角的に評価するために,海外の研究者および隣接領域の研究者とのワークショップ(集中セミナー)を開催し,最新情報の共有と意見交換を行うという点に関しては,本年度に実施し,具体的成果を挙げることができた。 3) 東アジア仏教論理学文献の調査:花園大学での研究打合せおよび奈良の因明関連史跡の確認を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
『認識論評釈荘厳』の苦諦セクションのテキスト校訂と訳注作業をペースアップすべく,研究協力者の松岡氏との研究打合せを重ねることが重要であると認識している。また,三代氏の所属の変更に伴い,研究計画に変更が生じる可能性があるため,その点については同氏と話し合い,無理のない研究計画を策定するようにしたいと考えている。また,昨年度の国際ワークショップの成功を受けて,Franco教授より仏教認識論研究の中心地のひとつであるオーストリア科学アカデミーで第二回ワークショップの開催について打診されたこともあり,今年度の国際ワークショップの計画は順調に進められている。また,稲見氏の定期プラジュニャーカラグプタ研究会において本科研の計画についても随時,意見交換を行う予定である。
|